ゼロ・レクイエムに対して、後悔が「全くない」わけではなかった。


ただ、俺に出来る最善と妥協はそこまでで。

それにナナリーはもう、俺の知っている弱く守られる為の存在ではない事に気付いてしまったから。

そう、自分がいなくても大丈夫なのだと。

悲しいが、それ以上に安堵したのも事実だ。

彼女は俺に縛られない。

俺の想像している以上に美しく、けれどそれだけではない素敵な女性になるだろう。

それは自分が描いていた理想に似ていて、だから俺は受け入れたのだ。


ナナリーが大丈夫なら、そして。


予想される危惧は、シュナイゼルがどうにかしてくれるだろう。

だから、俺は自分の生を存分に駒として使えた。

誰よりナナリーが幸せになれる様に


それと…スザクに、生きる事の大切さを気付いてほしかった。


無論、それだけではない。

それ以外に自分と関わった生徒会のメンバーや、これからの世界を考えると一番犠牲が少なく、かつ確実に変化をもたらす事が出来る方法だから選んだのだ。



「それなのに何故、俺は生きているんだ」


いや、正しくは生きているわけではないだろう。

周りはただただ真っ白で、到底現実とは思えないあやふやな感じだ。

恐らく、これはいつだったか体験したCの世界だろう。

俺が死んだ後死体は民衆に晒せと命じてあるから、本来見えるのは民の憎悪と軽蔑のはずだ。

それに死んだ時は皇帝用の衣服を身に着けていたというのに、今着ているのはアッシュフォードの制服。

それは皇帝になる事を宣言した日の後、スザクに捨てろと命じて渡したのだ。

今、俺が着れるわけがない。

だからこれは俺の深層心理でも反映しているのだろう。

俺にとってアッシュフォードの偽りの箱庭が、いや、スザクと居た時間が何よりだったから。

「…いや。下手な感傷に浸るよりも、やるべき事があるだろう」

明るい白色で統一されている空間は、何故か太陽や空が見つからないが周りも良く見える。

見渡す限り同じような光景で、歩いても意味はないだろう。

いや、そもそも考える事すら無駄だ。

「…C.C.、どうせお前の事だ。俺がこうして悩んだりするのを笑って見ているのだろう?」

諦めてそう呼びかければ、

「ふぅん?分かっているじゃないか」

楽しげに返る言葉に、俺は溜息を吐いた。





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