童謡 大きな階段を登った先の広間。 海星型の絨毯の中心にある貝殻の玉座に、乙姫はいた。 「ようこそいらっしゃいましたわ」 立派な龍の角を生やした乙姫は、 期待通りの美貌をしていた。 さらさらとした黒い髪と垂れた目、 そして白い肌がどことなく色っぽい。 普段着なのだろうか、 身につけている着物には刺繍も装飾も多くなかったが、 高級感が漂っている。 まさに、「お姫様」と呼ぶに相応しい。 「和助を助けていただいたそうで」 乙姫に深々とお辞儀をされて、 慌てて香澄も頭を下げる。 腰の低い乙姫からは、フェアリーランドで謁見した長老とは真逆の印象を受けた。 「ゆっくりしてくださいまし、ね」 可憐に笑う乙姫の笑顔は、 この世のものとは思えないほどに美しくて。 絵にも描けない美しさ、 とはよく言ったものだなぁと。 童謡を唄った人に、 香澄はただただ感心していた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |