化け物 目の前にいるのは、犬とも虎ともいえない動物だった。 それも、首が三本も生えている。 大きさはかなり大型で、 恐らく飛び掛かってくれば、 香澄など一たまりもないだろう。 外見とは裏腹に穏やかな性格だったりしないだろうか。 と希望を抱いてもみたが、 彼(彼女?)が口から垂れ流している涎を見るからに、それはないだろう。 鼻息もずいぶん荒い。 あぁ…なんか刃がやっていたスターなんとかとかいうゲームにこういうの出ていたな、 と軽く現実逃避してみる。 しかし。 「こういうのはボスで出てくるもんで、 序盤は半液体状の生物だったっつーのぉーっ!」 飛び掛かってきた猛獣を避けることも出来ず、香澄は目を瞑る。 もう駄目だと、父親を呪う覚悟をした瞬間だった。 肉を斬られる生々しい音と共に、血飛沫が舞う。 だがそれは、香澄のものではなかった。 ゆっくりと目を開けると、 先程の猛獣が目の前で死に絶えている。 傍らには、自分を助けてくれたであろう男性が立っていた。 「おい、大丈夫か」 お礼を言おうと香澄が頭を上げた次の瞬間。 「…ぎゃぁぁああっ!!」 色気のない叫び声を上げて、 香澄は一目散に逃げ出した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |