ナギサ様/雲雀切甘夢



ふわふわ、ふわふわ
綿毛になって飛ぶ姿は貴方の様
風が吹けば気儘に飛び立ち寄り添う事を知らない。
否、飛び立ったら最後帰っては来ない。
真っ黒な貴方
真っ白な姿を纏うタンポポの様に居なくならないで









「あ、たんぽぽ」


放課後、応接室で下校時の町内巡回をする恭弥を高級皮張りソファに座って待っていたら空いていた窓からふわりと種を持った綿毛のタンポポがたった一つだけ入り込んで来た。

暇だった私は立ち上がりその綿毛を掌の中に収め様と両手を近付けて見る。


「よっ」

「ほぉ!」

「とやーっ」

「はあぁ…」


何度両手を閉じようとしてもそれは直ぐに間から飛び立ってしまう。誰かに似てる、なんて想いが浮かんで自棄になって何度も腕を延ばすけど捕まる事のない其に苛立ちを感じて仕方なくソファに戻ろうとした、が。


―ふに―


「およ?」


私の尻に当たったのはソファのふわふわな感触では無くて、もっと別の物だった。この感触は結構知っている、故に恐る恐る後ろを振り返れば案の定一人の男の子がしかめっつらで私を見ていた。


「おわぁああ!」

「人の膝に座って置いてその驚きは何」

「…すみません」

「まあ良い。それにしても随分面白い事をしていたね」


すとん、と私を隣にずらして自分は膝を組む恭弥。テーブルに無造作に置いてあった書類に目を通して私には見向きもしない。口だけは動いてるといった感じだ。


それが、寂しい


「タンポポの綿毛をね、掴もうとしてた」

「ふうん」

「まるで恭弥みたいだって思った」

「…」


何が気に喰わなかったのか知らないけど僅かに寄った眉間。シワが出来て居る。いつもそう、無言になって話をしなくなる。気まずい雰囲気、重苦しい空気に堪えられなくなったのか恭弥は書類を持って隣から居なくなってしまう。何時もの仕事を熟す椅子へと行ってしまった。私は構わず声を投げ掛ける。


「恭弥」

「…」

「タンポポの花言葉って知ってる?」

「…」

「…離別って言うんだよ」


空中をさ迷う綿毛が恭弥と重なる。普段全く愛の見えない恭弥、付き合ってるかどうかも解らない様な態度。本当は好きじゃないんじゃないかって何度も思った事が在る。その度に頭を過ぎるのは離別の言葉だった。








「恭弥の気持ちが見えないから、要らないって言われて別れちゃいそうで怖いよ…」







ギシ、とソファに横たわって顔を隠す。自然と浮かぶ涙を隠して居れば何かが動く音が耳に入って来た。





「僕の事が信じられないならそれで良い」

「きょう、っん…」

「群れるのは嫌いだ」


目の前には人影が、覆い被されて突然塞がれた唇、其は恭弥からのキスだった。何度も何度も優しく啄む口付けに私の想いは関を切った様に涙となって溢れ出して来た。






「何処にも、行かない、でっ…」






群れを嫌う貴方だから
せめて離さないでと願わせて
タンポポの綿毛は床に落ちて揺れて居た。



(君に、この想いが届いたら良いのに)







___________
ナギサ様相互記念夢雲雀切甘夢でした!切甘になりましたかね?雲雀さんは好きだけど想いを伝えられない、名前ちゃんは雲雀さん大好きだけど雲雀さんの態度が変わらない事で愛情が低いのではと日夜心配してるーっみたいな感じな切ない想い同士の交差を楽しんで頂けたらと思います。
ナギサ様相互有難うございました!

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