愛璃様/雲雀甘



桜がひらひら舞う並木道を歩いて行く。

もう大分寒さが軽減し道を歩いていても短いスカートから覗く足がキンキンに冷える事はなくなった、快適な季節がやって来るのは凄く良い。

だから今日は雲雀さんとお散歩がてらのゆっくりデート。



「それにしても桜が綺麗ですねー」

「花が散ってるだけだろ」

「それでも綺麗なものは綺麗なんですよ。季節の風物詩ですしあとでお花見しませんか?並盛公園はきっと見頃ですよー」

「嫌だ、あれを見ると胸糞悪くなる」

「ですよねー」


あんまり桜が好きではない雲雀さんの横でそんな話を振っても駄目な事くらい分かってたけどね、こうして並木道を歩いてくれるだけで良しとしよう。

のーんびり歩いて行けばふとコンビニが目に入った。


「あ、」

「?」

「ちょこまん!」


自動ドアから人が出て来たほんのちょっとの間で垣間見たのはレジ近くの肉まんとかあんまんが入ってるやつ。

その中にちょこまんが入ってるのが見えてデート中にも拘わらず雲雀さんの横から離れてコンビニに走った。


「ちょこまんくださーい」

「ちょっと。置いてくなんて良い度胸だね」

「あ、雲雀さんも食べます?ちょこまん」

「いらない」

「すみませーん。肉まんも追加で!」

「人の話を聞け」


だって雲雀さん絶対要らないって言うの目に見えてるしね、行動にした方が勝ちだよ。店員さんが210円でーすと愛想良く言うのでお会計を済ませると同時にちょこまんと肉まんの入った紙袋を渡されたからそれを持ってまた並木道に戻る。


「ふふふーちょこまんちょこまん」

「もう春先なのに馬鹿だね、季節外れも良いところだ」

「いーんですよ、そろそろなくなっちゃいますから」


そう、段々暑くなってく春も半ばになれば肉まんもちょこまんも販売されなくなる。だから見納めならぬ食べ納めだよ、うん。


「春になってなくなっちゃうちょこまんも肉まんも今が食べ時ですよ。熱々のちょこまんを桜が舞う中で食べる、これ最高の理なり」

「意味わからないんだけど」

「つまりは冬と春を一度に味わうという贅沢をしちゃおうっていうわけですよ」


はい、と肉まんを渡せば相変わらず仏頂面の雲雀さんは嫌そうに一瞥してから受け取ってくれた。

そのまま噛り付く姿を確認してから私もちょこまんを口に頬張る。ほんのり甘いチョコの味が口いっぱいに広がってしあわせー…とか思ってるとちょこまんを持ってない方の手をガシッと掴まれた。



「ほえ…」

「行くよ」

「どこにですか?」

「並盛公園」

「え、ちょ…ま…!」


何気に恋人繋ぎにされた手はそのままにずんずんと歩き出す雲雀さんによって私の体は引きずられていく。

不思議に思って首を捻ると軽く睨まれて、そして


「僕は冬と春と君を堪能するんだからね」


そう言った時の雲雀さんのほっぺはほんのり桜色でした。





(名前と食べた肉まんは春なのにとても美味しかった)
(来年も食べたいな)



_____________
相互記念愛璃様リクエスト雲雀甘夢でした。桜を見ながらのちょこまん肉まんを食べるところに甘さを見出だして頂けたらと思います、甘いというよりほのぼの、ですかね?
この時期って何故か食べたくなる気がしますちょこまん。
愛璃様リクエストありがとうございました!


20100410

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