弧白様/ベル狂愛



愛してる
あいしてる
アイシテル

王子がアイシテルんだぜ?
お前も嬉しいよな?
だって王子と一心同体なんだから。




「はぁっ、は…ハッ!」


名前はひたすら裏街道を駆けて居た。イタリアは意外に道が入り組んでいる為にあの屋敷はもう見えない。数十キロも離れたこの場所なら余計に平気だと思い漸く逃げ切れたと安堵から自然と脚は走るのを止めただ前へ歩くだけになる。しかし息も整った頃、名前は脚を完全に止め空を見上げた。


「綺麗…」


キラキラと月と星が艶やかに輝く様子に名前は漸くあの地下室で無い事を実感した。最愛の人に閉じ込められたあの陰気で鉄の匂いしかしない地下室では無い事を。


「うししっ、名前めーっけ」

「……っ!」


名前は一瞬心臓が止まったかの様な喪失感を覚える。逃げ切れなかった、また捕まってしまった。今度こそ逃げ切れたと思っていたのに。その落胆を隠せず、いや絶望からカクンと膝が折れて冷たい地面に跪く様に座り込んだ。


「王子と追いかけっことか、流石名前だよな」

「な、んで…」

「ん?ずーっと付けて来てたんだぜ。いつ名前を抱き締めて捕まえてやろうか考えてたらこんな所まできちまった」


ぎゅ、と背後から名前を抱き締めてご満悦なベルとは対照的に名前はガチガチと震え始める。
鼻を付く鉄の匂い、微かに香る腐敗臭。

暗闇の中、月明かりが二人を照らすとベルの腕や金色の髪、隊服に至る迄赤い物が付着している。何度見ても慣れない、慣れたくない光景に名前は震えながら唇を開いた。


「その、赤いの…」

走る名前を見てたから俺が殺してやった。だって嫌じゃん。王子のお姫様を見る奴なんて針千本でも足らねーし」

「なんで、なんで…なんで私なの…」

「ししし。名前以外いらねぇよ」


抱いた身を反転させて、血濡れた手でベルは名前の頬に触れる。べったりと付いた他人の赤に髪に隠れた瞳を細めて笑った。


「名前がこーやって血に濡れた姿を見ると惚れ直すんだよね。だから毎回逃げてくれてサンキュ」

「狂ってる…」

「違うぜ、アイシテンノ」

「ベルは、血を、愛してるんだよ。…私はただの人形、着せ替え人形と一緒だよっ…」


あんなに愛し合っていたのに。
コワレタノハイツカラ?


泣き崩れた名前を見てベルは何の迷いも無く愛用のナイフを取り出し頬に宛てる。力を入れた刹那頬からはつぷ、と赤い物が滴となり伝い、地面に堕ちた。


「もう血で狂わねーよ。コレ、名前のお陰だし」

「私じゃ…な」

「名前だって。だから名前、超好き。アイシテル」


次第に強く強く刺して肉を刔る様にボタボタと血を出しながらベルは笑う。


「だから名前はあの部屋でずっと王子と一緒な」


名前はもう何も考えられなかった。涙を伝わせる名前と笑いながらキスを施すベルの姿を月だけは見詰めていた。




愛してる
あいしてる
アイしてる
アイシテル



ア イ シ テ ル



だからさ、ずっと王子のモノでいて?

あの部屋で王子だけのお姫様で、居て…―――



ア イ シ テ ル





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弧白様との相互夢です^^
ベル狂愛夢でしたが似てませんね、はい…;д;
弧白様、ぐだぐだですが貰って頂けると幸いです!

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あきゅろす。
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