Mille-Couleur.
ユメに想う。
夢を見た。
俺は生まれてこのかた離れたことの無かったあの店に来たあたたかな声を持つ男。
そのひとが俺を買ってくれる夢。
店から連れ出して太陽という光の元に、初めて出た夢。
抱いた期待を打ち消したにも関わらず、俺はそんな夢を見てしまった。
いままであの店を訪れるのは、録でも無い奴等だけだったからからだろうか。
声に冷たさを感じることはあっても、あたたかさを感じることは無かったのに…。
夢の中の俺は、至極嬉しそうだった。
男に嬉しそうに話しかけていたが、俺には男の顔が見えなかった。そういえばずっと目を閉じていた気がする。
顔が見れなかったのは残念だが、これで良かったのかもしれない。
もし顔なんて覚えていたら、思い出してしまうだろうから。
ニンゲンなんて、記憶に残す価値も、意味も、何も無い。
俺たちとニンゲンは、違う。
頭の中に響くあの人の声。
2回ほどしか耳にしなかったというのに嫌に鮮明だ。
俺も大概、人間が嫌いになれないらしい。
――顔も知らぬ者に期待してしまうほど。
――微かに感じる直感。
朝か……。そろそろあのダミ声が俺らを怒鳴りに来る時間だろう。
毎日ふと目が覚めてしまう。
かわらない、日常だ。
俺は、今までのように何ひとつ変わらない穢れた日常を過ごすべく。
普段以上に怠惰な面持ちで非常に重たい瞼を、こじ開けた。
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