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そこまでする程の事か?



彼の名は雲雀恭弥。
何事にも群れ(団体)・束縛を忌み嫌う男。
余りにも負けず嫌いであり、余りにも自尊心が高い。
そんな彼にふ、と私は言ってみた。


「人間って時間に縛られてるよね」


次の瞬間、雲雀恭弥は校舎中の時計を叩いて割っていった。
彼は見事その支配からの卒業を果たしていく。
そして、全ての時計を壊し切ると雲雀恭弥は私に得意気な笑みを向けた。

別にそんな事ないよ?
と言いた気に。
私は面白くなった。
あの雲雀恭弥が私のふとした言葉に左右される事が。
そしてまた私は言ってみた。


「それでも人間は法律や政府に支配されてるよ」


それから雲雀恭弥はこの場を去った。
なんだ、これでおしまいか。
姿が消え、玩具が無くなった事に肩を落とした。






でも、次の日。
玩具は無くしていなかった。
有り得ないことに雲雀恭弥は一晩にして裁判所、国家議事堂等を制圧し、国を支配していた。
またもや雲雀恭弥はしてやったりな表情を私に向ける。

つくづく面白い男だ。
ほくそ笑む私の隣には黒スーツの赤ん坊がにやりと笑っていた。





「群れるなって言うけど、実際風紀委員と群れてるよね」


と言うと風紀委員全員を殴り始める。
そして風紀委員の屍累々ができた。
全員撲滅すると雲雀恭弥は返り血を浴びたまま私に笑む。
そして私はまた歪んだ笑いをする。


「人間って重力に負けてるよね」


私がそう言えば次の日リーゼント。
になっている訳は無かった。
しかし少しでも地を離れようと爪先がピンと伸びていた。
子供染みた小さな抵抗。
これには私は思いっ切り腹からの笑いを出した。

面白い。
それからも雲雀恭弥は私の言葉に左右されて。
そして気が付けば私の隣にはいつも雲雀恭弥がいた。
私の言葉を待っているのか。
私に依存しているのかは分からない。
まあ多分後者は万に一も無いだろうが、色々遊ばせて貰ったしネタもそろそろ尽きてきた。
これでこの言葉遊びを最後にしよう。


「雲雀」


名前を呼ぶと振り向く。
言葉を焦らす間ずっと雲雀恭弥は私から目を離さない。
主人からの命令を待つ犬の様に。
唯、じっと。
この瞬間が最高にたまらない。
時間をかけ過ぎるとまた背を向けられるので私は焦らすのを止めた。
そして、一言。


「雲雀、アンタは私に縛られてる」
「そう…じゃあ、咬み殺すよ」


チャキっと彼の仕込みトンファーが構えられる。
何人もの血を浴びてきた雲雀恭弥の身体が、これから私の血に染まる。
そう考えるとゾクゾクした。
身体を興奮に震わせる間も無く雲雀恭弥は実行に移り始めた。

まず一発、頭に鈍痛。
二発、鳩尾にトンファーがめり込む。
吐きたくなったが口からはなにも出なかった。
三発目、屈み込んだ背中に雷が走る。
四発、五発、六発…身体に叩き込まれる坤撃。
意識がプツッと途切れそうになると攻撃は止む。

目を開けようとする。
でももう見えない。
身体を動かそうとする。
でももう動かない。
身体の感覚がない。
でもお腹からは臓器が出ている事は知っている。

これでサイゴだ。


「雲雀…人間ってのは生≠ノ縛られてるんだよ……」


言い終わると、口から血が出る。
私は疲れて目を閉じるとそこから意識は消えた。
二度とこの画面が回復する事は無いだろう。
私の血をしこたま被って染まった雲雀恭弥を見たかったが叶わなかったのだ。

するとそのすぐ後から銃声が響き、雲雀恭弥の身体が上に折り重なって来たのを私は知らない。










そこまでする程の事か?
(最後まで、雲雀恭弥は私の言葉に支配されていた)

070810



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