広い世界の夢物語 8 意識がないマルロスを、エネルは無造作に放り投げる。 ドサッ、と落ちたマルロスは、その衝撃で目を覚ました。 「ぅ……っ」 うっすらと目を開けば、そこはメリー号とは違う船の甲板だった。 絨毯が敷かれたそこに倒れたマルロスは、上手く言うことをきかない身体を起こす。 まだ少し痺れている身体に鞭を打ち、何とか起き上がったマルロスに、エネルは目が覚めたかと声をかける。 その声に振り向いたマルロスだが、現状が把握出来ていない今は睨むだけ。 エネルから感じる雷の気配に、自分が意識を失う原因になったのがこの男だと、マルロスは本能的に理解する。 「……………人質、のつもりですか?」 「ヤハハハ、人質など無意味。お前は私のものにする、ゲーム参加者から除外してな」 「………ゲーム?」 「何のことはない、ただのサバイバルだ」 含みを持たせた笑みを浮かべ、エネルはマルロスに歩み寄る。 逃げようとしたマルロスだが、まだ身体が思うように動かないせいで、簡単に捕まってしまった。 ぐいっ、と髪を掴まれ、じっくりとその顔を覗き込むエネルの顔を、マルロスは睨み付けた。 「ふむ、なかなか美しい瞳だな……宝石のようじゃあないか。気が強いのも悪くない」 こんな男に褒められても嬉しくない、とマルロスはエネルを睨む。 サンジやゾロ、ルフィ達に宝石みたいな瞳だと言われた時は、あんなにも嬉しかったのに。 まるで汚されたように思え、マルロスは唇を噛む。 「…………さて、そろそろ私も行かねば」 掴んだままのマルロスの髪を離して、エネルは立ち上がる。 拘束されていない今なら、逃げるチャンスだとマルロスが隙を伺っていると、それを察したエネルはマルロスの腕を掴む。 そのままマルロスを引きずっていくと、黄金で出来た壁の前にマルロスを連れていく。 そして、マルロスの右手を壁に押さえ付けると、電熱で黄金を溶かしてマルロスの手首に枷を作る。 「あ゛あぁあああ!!」 電の力で高熱になった黄金の枷が、マルロスの手首を焼く。 堪えきれない熱さと痛みに、マルロスが悲鳴を上げる。 その苦痛に歪んだ顔を、エネルは満足げに笑って見ている。 熱さと痛みに息を荒らげたマルロスは、遠退きかけた意識を何とか繋ぎ止める。 「ゲームが終わるまで大人しくしていることだな」 そう言い残し、エネルは姿を消す。 呼吸を落ち着けようと、深呼吸するマルロスは、エネルの気配がなくなってから辺りを見回してみる。 よく判らないものがある甲板、それらを冷めた目で眺めたマルロスは、自身の右手に視線を向ける。 電熱で皮膚が焼け、枷に張り付いて動かせない。 「…………参ったな……」 その気になれば、たぶん逃げることも出来なくはない。 だけど、今逃げ出すことは得策じゃないと判断したマルロスだが、他のクルーの状況が判らないことが気持ちを逸らせる。 サンジ達は無事だろうか、と思いを馳せる。 [*前へ][次へ#] |