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広い世界の夢物語


ふとマルロスは、以前に言われた陰口を思い出す。
あれは確か、まだマルロスが武官として主君に仕え始めて間もない頃、先に武官として仕えていた親友と話していた時に聞こえた陰口。
貴族出身の親友と、出生もはっきりしないマルロスが親しくしている様を見て、マルロスは貴族の寵愛で特別に武官になれたんだと、陰でコソコソと嫌味を囁かれたことがある。
その時は聞こえないフリをしたが、その陰口に憤慨したマルロスはそれからしばらくの間、親友を避けて過ごした。
陰でそんなことを言われていることを知って、ならばそんなことを言えないようにしてやる、と考えたのだ。
親友を避け、一人で剣の腕により一層の磨きをかけて、人一倍の雑務もこなした。
自分自身の実力を示して、親友と対等の立場まで自力で這い上がってやると、それだけの想いで努力を続けた。
そして実際に、50年程で彼らと同じだけの地位にまで実力だけで上り詰め、その頃もまた同じような陰口が囁かれた。
だが、実力を認められてのこともあったので陰口はすぐになくなり、何よりマルロスを慕う者も多く居た。

「……………んなことがあったのか?」

「エルフは決して、完璧な種族ではないよ。他者を羨んだりすることも妬んだりすることもあるし、誰かを憎んだりすることもある……仲間の血で手を汚したこともあった……」

そう囁くように呟いて、マルロスはグラスを置いて小さく歌を口ずさみ始める。
耳を傾けるサンジには、何を歌っているのか言葉は判らないけれど、不思議なことに歌の情景が脳裏に映像として浮かんできた。



 

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