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広い世界の夢物語
想い出1

「〜♪〜〜♪」

木漏れ日が射す庭に、美しい笛の音が響く。
柔らかな調べの笛の音は、優しく木々の葉を揺らす。
青みを帯びた長い銀の髪が風に揺れ、紫暗色の瞳が優しく庭の花を見つめている。

「エクセリオンっ」

不意に弾んだ声が聞こえ、笛を奏でていた青年が頬を緩ませながら笛の音を止めれば、庭の樹々の向こうに黄金色の輝きが見える。
色とりどりの花を越えて、目の前に駆け寄ってきた黄金色の輝きは、庭の花にも敗けない笑顔を浮かべている。

「やっぱりここに居たね、エクセリオン」

「やっぱり?」

「仕事のない時は、大抵この庭で笛を奏でてるだろう?」

「そうだったかな」

エクセリオンと呼ばれた、銀色の髪の青年が柔らかく微笑んで黄金色の青年に手を伸ばせば、当たり前のように彼はその手を取って隣に座る。
さらり、と黄金色に輝く長く美しい髪が揺れて、金色の睫毛に縁取られた碧翠色の瞳がエクセリオンを捉える。
宝石のようなその瞳に、自分の姿が映っていることがエクセリオンはたまらなく嬉しく、彼が自分の傍らに居るだけで頬が緩んでしまう。

「エクに渡したい物があって探してたんだ」

幼い頃からの愛称で呼ばれ、エクセリオンは柔らかく微笑んだまま軽く首を傾げれば、彼が大切そうに握っていた手を開く。
それを受け取り、開けるように促している彼の眼差しに答えるように、蒼いビロードの張られた小さな箱の蓋を開く。

「……ブローチ?」

「私が将に任じられた時、エクから額飾りを貰っただろう?随分と遅くなってしまったけど、そのお返しにね」

綺麗に澄んだダイヤと、それを飾る銀の細工が見事な美しいブローチが、木漏れ日にキラキラと輝いている。
泉を模した物らしいそのブローチを手に取り、彼のしなやかな指がエクセリオンの胸元にそれを飾れば、更に輝きを増したようにも見えた。

「うん、良く似合ってる」

満足そうに笑い、指で優しく胸元のブローチを撫でる。
その額には、昔エクセリオンが彼に贈った額飾りが、木漏れ日に輝いている。
薄く蒼みを帯びたダイヤが、木漏れ日に煌めく。
微笑む彼を見つめるエクセリオンの眼差しは、彼を愛しむような優しさに満ちている。

「エク?」

「いや、ありがとう。大切にするよ」

「ふふ……そうだ。ねぇエク、久し振りにエクの笛を聴かせてくれないか?」

「もちろん、喜んで」

この親友の頼みならば、エクセリオンは断ることはない。
彼が望むのなら、日がな一日笛を奏でることだって厭わないと思いながら、エクセリオンは膝に置いていた笛を手に取る。
吹き口に薄い唇を添え、彼が好きだと言っていた曲を奏で始めれば、彼は瞳を閉じて笛の音に聴き入る。
しばらく聴き入っていた彼は、曲が新たに変わったことに気付くと、旋律に合わせて澄んだ歌声を響かせる。
笛の音と歌声が、木漏れ日の射す庭に響き渡る。


 

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