広い世界の夢物語
ミス・オールサンデー
「船を岩場にぶつけないように気をつけなきゃね、あー追手から逃げられてよかった」
「な!!誰だ!?」
突然響いた女の声に、全員の視線が集まる。
ラウンジの前の手摺に腰掛け、組んだ膝の上に頬杖を突いたその女性は、薄く笑みを浮かべていた。
気配にも聡く、耳の鋭い自分が気付けなかったことに驚き、マルロスが小さくいつの間にと呟いて腰の剣に手を伸ばす。
油断したつもりはないのに、と悟られないようキツく柄を握り締め、ピリピリとした警戒を見知らぬ女性に向ける。
「何であんたがこんな所にいるの!?ミス・オールサンデー!!」
ビビの叫びが響く。
誰のパートナーかと思えば、唯一ボスの正体を知るMr.0のパートナーだと言う。
ビビ達は、彼女を尾行することでボスの正体を知ったらしい。
もっとも、それは彼女が尾行させてあげたから知り得た事実であり、ビビ達が正体を知ったことを告げたのも彼女。
それを聞いて、何だか掴めない女性だとマルロスは思う。
目的は何なの、と問い詰めるビビにも、彼女は薄く笑みを浮かべたまま答える。
「さァね…あなた達が真剣だったから…つい、協力しちゃったのよ……本気でB・Wを敵に回して国を救おうとしている王女様が…あまりにもバカバカしくてね……!!」
「……………ナメんじゃないわよ!!」
ほんの僅か、笑みを深くしたミス・オールサンデーの酷薄な言葉に、ビビが憤り怒鳴る。
その言葉を合図に、マルロスは右手に剣を抜く。
女性に剣を向ける、なんて行為はあまりしたくはなかったけれど、状況が状況なだけに仕方がないとマルロスは思いながら、剣を握る。
マルロスだけではない、ミス・オールサンデーを挟むようにサンジが銃を、ウソップがいつものパチンコを構える。
事情は判らずとも、ビビの危機だと判断したらしい。
ゾロとナミも、臨戦態勢で彼女を見上げている。
「………そういう物騒なもの」
「え!?」
「わ!!」
「私に向けないでくれる?」
まるで、投げられたかのようにサンジとウソップの身体が宙に浮かび、下に投げ落とされる。
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