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広い世界の夢物語


慌ただしい出航になったが、まだ無事とは言えない。
どれくらい居るのか判らない追手と、これから先の旅路のこともある。
ひとまず、すぐに追手に襲われても良いようにと、マルロスは周囲の警戒を怠らない。
エルフの鋭い耳にも、今は穏やかな波の音しか聞こえない。
追手となるB・Wの社員は、総勢2千人いると言うのだから、相当な大組織だ。
ボスの正体を知ってしまったのだから、千人が追手として差し向けられてもおかしくはない、とナミとビビ、ルフィが話している。
そんな話を聞きながら、マルロスは船の周囲を眺める。

「マルロス」

「どうした?」

「いや、追手が来てるか判るのか?さっきから周りを気にしてるみてェだが」

「エルフの耳と目は人の子より優れているから、遠くともそれらしいのが来れば判るよ。だけど今はまだ大丈夫みたいだな」

風に長い髪を揺らし、柔らかく笑んだマルロスにゾロはそうかと頷き、誤魔化すように川面へ視線を転じる。
マルロスの微笑みに、未だ慣れないらしいゾロを横目にナミが見ていたが、呆れたように肩を竦めて何も言わない。
そんな時、甲板に転がされていたサンジとウソップが目を覚ましたらしく、何やら騒ぎ始めた声が聞こえる。

「おいっ、何でだ!?何でもう船出してんだ!?待ってくれよ、もう一晩くらい泊まってこうぜ、楽しい町だし女の子はかわいいしよォ!!」

「そうだぞ!!こんないい思い、今度はいつできるかわかんねェぞ!?ゆったりいこうぜ、おれ達は海賊だろ!?まだ朝にもなってねェしよ!!戻ろうぜ、おい、聞いてんのか!!」

ギャーギャーと騒ぐ2人に、ゾロが呆れたように溜め息を吐くと、マルロスも苦笑いを浮かべる。
ずっと寝ていたのだから、あの町で何があったのか知らない2人が騒ぐのも無理はないが、少々うるさいのも事実。
説明してくるのも面倒な気がしなくもないが、放っておくのもうるさいだけだと思ったマルロスは、騒ぐ2人の元へと足を向ける。
その横をすり抜けて、ナミがサンジとウソップの前に立ちはだかったかと思うと、目にも止まらぬ早さで拳を振り上げる。
あ、と思ったマルロスが目を背けるより早く、2人はナミに殴られて黙る。

「おい、ちょっとあいつらに説明を……」

「うん、してきた」

清々しく立ち去ったナミが、ゾロにそう答える声を何処か遠くに聞きながら、マルロスは倒れた2人をルフィとビビと一緒に眺める。
改めてナミの恐ろしさを実感しながら。

「あ、霧が出てきましたね」

「もうすぐ朝ね……」

話を逸らすように、マルロスは辺りを見回してそう呟けば、ナミがそう返す。
視界を白く染める朝霧に、少し湿った風が吹く。


 

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