広い世界の夢物語
出航
海上で揺らめく炎に背を向け、ルフィが一言叫ぶ。
「立派だった!!」
立ち止まってはいけない、そう知っているマルロスもすぐに頭を切り替えると、まだ呆然とするナミに声を掛ける。
「ナミさん、ログは!?」
「だ……大丈夫、もうたまってる」
「彼女をお願いします、すぐに船を出しましょう!!」
ナミが頷いたのを見て、マルロスは先に走り出していたルフィとゾロを追い掛ける。
今は立ち止まる時でも、彼の死を悼んでいる時でもない。
そうと知っているから、マルロスは炎に背を向けた。
マルロスが微かに震えていたことに、誰も気付かなかった。
「おいルフィ、2人を起こして来い。おれとマルロスは船へ」
「うし、任せろ!!」
ゾロの言葉に、二手に別れる。
碇を巻き上げると、ルフィがサンジの足とウソップの鼻を掴んで船に戻ってきたが、2人はどうも気絶しているようだ。
引き摺ってきたのだろうか、とマルロスが若干同情気味に気絶したサンジを船に担ぎ上げ、甲板に寝かせる。
ウソップも、今度は鼻ではなく普通にルフィの肩に担がれて船に乗せられ、サンジの傍らに放り投げられた。
ナミとビビも船に戻ってきたけれど、カルガモがいないと何やら騒いでいる。
それを聞いてマルロスは、自分の傍らの鳥を見つめる。
「………なぁ、ゾロ……」
「ん?あぁ、こいつか」
「そこかァ!!」
探してもいないはずだ、何しろこのカルガモ、ゾロとマルロスが船に戻ってきた時には、既に我が物顔で乗り込んでいたのだから。
驚きはしたが、取り敢えず出航の準備に忙しかったために、マルロスもゾロも放っておいたのだ。
船に乗り込んだビビが叫ぶ。
「舵を川上へ!!少し上れば支流があるわ、少しでも早く航路にのれる!!」
「行くぞ!!」
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