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広い世界の夢物語


それを聞いて、マルロスは少し驚いたような表情を浮かべたけれど、ルフィとゾロは気にも止めなかったらしい。
王女をアラバスタまで送り届けてくれ、と頼むイガラムに、ルフィはあっさりと頷く。
それを聞いたナミが、断んなさいよと怒っている声は届いていない。

「では王女、アラバスタへの"永久指針"エターナルポースを、私に」

イガラムの聞いたことのない言葉に、涙を流して嘆いていたナミが顔を上げ、エターナルポースについて訊ねる。
エターナルポースとは、要はログポースの永久保存版。
次の島、次の島へと常に船を導くログポースに対して、一度記憶した島の磁力を決して忘れずに、永久にその島だけを指し続けるのがエターナルポース。
イガラムは、アラバスタの地を示すエターナルポースを持って王女になりすまし、抹殺リストに追加された3人のダミー人形と共に、追手を引き受けると言う。
本物のビビ達は、ログポースの指針に従って航海すれば、きっと追手は気付かないと。
上手くいく、とは一概に思えない、付け焼き刃の作戦のようにマルロスには思えた。
だが、誰かが身を呈して追手を引き付けなければ、ビビの身を護れないことはよく判る。
そして、追手を引き付ける役を自ら買って出たイガラムの気持ちも、よく判ってしまう。
全ては、国を、自身が仕える主君の姫君を守るため。
彼の想いは、かつてマルロスが抱いていた想いと酷似しているからこそ、その死すら覚悟した彼の決意が痛い程よく判る。
だからマルロスは、サボテン岩の裏に停泊していた船で先に出るイガラムとビビの別れを、見ようとはしなかった。
遠くはない記憶の中を垣間見るようで、とてもじゃないがイガラムを見送ってやることが出来なかった。
それでも、船がだいぶ遠ざかってからイガラムの無事を祈り、ゆっくりと背を向ける。
のんびりしている暇はない、と出航の準備のためにその場を離れようと全員が背を向けた時、突然、大きな爆発音が夜の海に響いた。
振り返った先で、イガラムが乗り込んだ船が爆炎に包まれるのを見て、誰もが息を呑んだ。
まさかもう追手が、と誰かの声がした。



 

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