[携帯モード] [URL送信]

広い世界の夢物語
目覚め






目が覚めて初めに見えたのは、漆黒の夜空に煌めく数えきれない程の星々と、銀色に輝く大きな満月だった。
あまりにも綺麗な夜空に、言葉もなく見入る。
手を伸ばせば届きそうな星々の煌めきに、ふと遥か遠い昔のことを思い出す。
彼らが目を覚ました時も、こんな風に煌めく星々を見上げたのだろうか。


そんなことを考えながら、彼は横たえていた身体をゆっくりと起こし、視線を夜空から前方へと下ろす。
すると、不規則に身体が揺れていることに気付き、周りを見て自分が小舟に乗っていることを知る。
波の揺れに合わせ、舟板を叩く波音が耳に心地好い。
潮の香りと波音に、舟は海に浮かんでいることに気付いた彼は船縁に寄り掛かり、空いていた手を水面へ差し伸べる。
夜の海はひやりとしていて、手首まで浸した手で水を掬い上げては、煌めく星々と銀色の月の輝きをぼんやり眺める。
月明かりに照らされ、黄金色の髪がきらりと輝く。




碧翠色の瞳が水面から外され、彼自身が今乗っている舟の上を見回し、傍らに二振りの剣が置かれていることに気付く。
鞘を見る限り、それは確かに彼の剣であった。
だが彼は、鞘から剣を抜かずともそれが彼の剣でないことに気付き、ゆっくりとそれに手を伸ばす。
鈍く銀色に光るその柄には、彼の好きな蒼と紅の宝石が嵌め込まれ、月と星々の煌めきに鮮やかに輝いている。
ふと、剣の傍らに小箱があるのに気付いた彼は、膝に剣を置いてその小箱に手を伸ばす。
蒼いビロードが張られた小箱の蓋を、しなやかな指でゆっくりと開く。
箱の中には、透明なダイヤと大きなブルーダイヤを使った銀細工のブローチと、鮮やかなガーネットとエメラルドを使った金細工の髪留めがある。
それが何であるか、彼は痛い程よく知っていた。
蓋を閉じて、彼は膝の上の剣と共にそれらをきつく胸に抱く。



一筋の涙が、色白の頬を伝う。







[次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!