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広い世界の夢物語



月が出た―――
ウイスキーピークの歓迎の宴は続く――

歓迎の宴の席で、マルロスは室内を見回す。
だいぶ嘘の混じった武勇伝を語るウソップ、町の住人と飲み比べをしているナミとゾロ、料理をこれでもかと腹に詰め込むルフィ、女性に囲まれて鼻の下を伸ばすサンジ。
仲間達のそれぞれに楽しそうな姿を、ジョッキを片手に眺めて笑みを浮かべたマルロスは、少しも酔ったように見えない。
量を言えば、10人抜きをして更に飲むゾロとそう大差ない程を飲んでいるのだが、顔色ひとつ変わることはない。
実際、マルロスは酔わない。
エルフと言う種族は、人の子のように酔って正体をなくすような酔い方をすることはまず殆んどなく、大抵は飲んでもホロ酔い程度にしか酔わない。
もちろん個人差はあるし、泥酔する者も居たが、マルロスは普通より酒に強い方だ。
もっともそれを知る人は居ないため、端から見ればとてつもない酒豪のように思われるかもしれないが、今この場でそれを気にする人はない。
浮かれきった宴の席。
そんな状況でもマルロスは、笑みを浮かべた涼しい表情の下で警戒を緩めない。

「……イカン、もうヤメだ」

ゴトッ、とテーブルにジョッキを置いて俯せたゾロは、そのまま寝入ってしまったようで。
それを見たマルロスも、そろそろ頃合いと判断し、ジョッキをテーブルに置く。

「少し夜風に当たって酔いを醒ましてきます」

誰にともなくそう言って、マルロスは宴の席を立つ。
マルロスが部屋を出た後、それぞれに楽しんでいたクルー達は次々に酔い潰れ、その場に倒れ寝入っていく。





 

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