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広い世界の夢物語
歓迎の島

内陸へと進む船の上で、霧に包まれた島を眺める。
さすがにこれだけの霧に包まれては、エルフの目ですら人の姿までは視認することが出来ないが、海賊船に気付いた住人の立てる音は届く。
バタバタ走り回る足音、ガチャガチャと何かが鳴る音。
足音の方はともかく、ガチャガチャ鳴っている音があまり良い物音には聞こえないと言うよりも、マルロスには武器を扱う音に聞こえている。
海賊は海の無法者、歓迎はされない、そう考えるのが普通。
マルロスは腰に下げた双剣に手を遣り、警戒を強めながら前を見据える。
じきに、住人達が海賊が来たぞと本格的に騒ぎ始めたことで、他のクルー達もそれを聞き付ける。
霧を抜け、町並みが見えたところで、歓迎の声が上がる。

「ようこそ!!歓迎の町、ウイスキーピークへ!!」

盛大な出迎えに、クルー達も驚きを隠せない。
川の両岸に人が集まり、ゆっくりと進むメリー号とそれに乗る海賊を歓迎する騒ぎに、初めは驚いていたクルー達の表情も明るくなる。

「か……かわいい娘も、いっぱいいるぜ……!!」

「感激だァ!!………やっぱ、海賊ってのはみんなのヒーローなんじゃねェのか!?」

「うおおおお―――い!!」

目に見えてはしゃぐのは、サンジとルフィとウソップ。
残ったナミとゾロは、未だ驚きの表情のまま両岸の騒ぎを眺めているし、マルロスも表情は明るくない。
武器を持つ者は居ないが、霧の中で聞き付けた武器を用意していた物音のこともあり、この町を信用出来ないのだ。
取り敢えず船を岸につけ、警戒心もなくルフィ達3人が岸に飛び下り、マルロス達も警戒をしながら船を下りる。
出迎えたのは、この町の町長だと言うイガラッポイとか言う髪を巻いた男性で、やたらと発声練習を間に挟む。
もてなしはこの町の誇りだ、と言う彼に誘われ、宴の席へと招かれる。
ログをこと訊ねるナミも、いささか強引な招きに宴が行われると言う建物に連れられ、マルロスはゾロと並んで一番後ろを歩く。

「ゾロ……」

「……わァってる。マルロスも注意しろよ」

後に続く町の人には聞こえぬように、マルロスとゾロが静かに言葉を交わす。
ゾロも、この町の奇妙なまでの歓迎ぶりを訝しんでいるのか、何処となく剣呑な雰囲気だ。
それでも、事が起きるまではしばらくこの芝居めいた歓迎に付き合うらしい素振りを見せ、マルロスもひとつ頷いてゾロの後に続く。

「宴だァ!!!!」

楽しそうな声が、夕暮れに染まる町に響く。


 

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