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広い世界の夢物語
ウイスキーピークへ

双子岬を出航して、大海原を行くゴーイング・メリー号。
今日の天候は冬、時々春。
何とも不思議な話だが、さっきまで暖かく晴れていた空が急に曇ったかと思うと、ちらちらと雪が降り始めた。
じきに止むかと思えば、雪はどんどん降り積もる。
甲板にも雪が積もり、大喜びでルフィとウソップがラウンジから飛び出し、薄着のままで遊び始めている。
そんな2人を眺めながら、マルロスもラウンジを出る。

「………綺麗だな」

静かに降り積もる雪を見上げ、マルロスがぽつりと呟く。
滔々と降る雪は、当然だが、かの地で見ていたものと何ら変わらない。

「マルロス、そんな薄着で寒くないのか?」

マフラーと手袋、スコップを片手に現れたサンジも結構薄着だとは思うが、マルロスも長衣に薄手のショートコートを重ねただけの格好。
マントは男部屋に干してある。
白い息を吐きながら、降り続く雪を見上げている姿は寒そうにも見えるが、マルロスは顔色ひとつ変えない。

「これくらい平気だよ。私の国は山の奥だったから、冬になればもっと寒く雪も深かった」

「へェ」

微笑んで答えるマルロスは、見上げていた雪を受け取るように手を差し伸べ、ひらひらと落ちる雪を優しく見つめる。
失くした国を思い出しているのか、その眼差しは優しく、何処か寂しげで。
そんなマルロスに、サンジは気付かれないよう眉を寄せる。
悲しい表情をして欲しくない、そう思うのだ。
もちろん、マルロスが大切だった全てを失ってまだ間もないことは判っているし、つい思い出してしまうのもよく判る。
それでも、マルロスが寂しげな悲しい表情をして欲しくない、とサンジは苦笑する。
ワガママだと言うことも、サンジはよく判っていた。

「………手ェ空いてんなら、雪かき手伝ってくれよ」

「あぁ、サンジ一人じゃ大変だな。判った」

ひとつ頷いて、マルロスが軽やかに階段を下りて倉庫に向かう背を見送り、サンジは自嘲気味に苦笑いを浮かべる。
マルロスが、ここではない別の場所を想っているのが嫌だったから、わざと手伝ってくれなんて言ってしまった。
格好悪いと、紫煙に混ぜて溜め息を吐き出す。
緩く首を振って、格好悪いことを考えていたモヤモヤした感情を頭から追い出して、甲板に積もった雪をかく。
ギャーギャーと、元気に騒いでいるルフィとウソップには目もくれず、雪かきに励んでナミに褒めてもらおう。

「ナミさん!!恋の雪かき、いか程に?」

「止むまで続けて、サンジ君」

「イエッサー」

そうだ、こんな風にしている方がよっぽど自分らしい。
そう思いながら、降り続く雪をスコップでかいていく。


 

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あきゅろす。
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