広い世界の夢物語
7
そう言って、昔の話を始めたクロッカスの話を神妙な面持ちで聞く。
かつて、ウエストブルーから海賊と共にやって来た小さなクジラだったラブーンを、預かってくれと頼まれ彼らの帰りを待っているクロッカス。
必ず世界を一周して戻ってくると約束して、50年もの長き間ここで待ち続けるラブーン。
仲間の生還を待ち続けるラブーンは、彼らのことを呼ぶようにリヴァース・マウンテンに向かい吠え続けている。
「……………そうか、この子はずっと、仲間のことを呼んでいたのか」
「呼んでいた?」
「この子は私達の、人の言葉を理解しているようでしたから、何を言っているのか、少し気になっていたんです」
誰かを呼んでいる、それだけは聞き取れたマルロスが納得したように頷いて、描かれた空を見上げる。
昔話を終えて、あまり長居すると船が溶けるとクロッカスに言われて、彼の案内でクジラの体外に出ることになる。
大きな鉄扉をくぐり、広く大きな水路をメリー号が進む。
「腹にこんな風穴開けてよく生きてんな、これも遊び心か?」
「医者の、遊び心だ。間違えるな。私はこれでも医者なのだ、昔は岬で診療所もやっていた。数年だが船医の経験もある」
そう話すクロッカスに、ルフィがうちの船医になってくれと勧誘するが、クロッカスにはあっさりと断られる。
クロッカスがクジラの腹の中に居るのも、外から治療してやることが出来ないからだと言う。
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