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広い世界の夢物語
落下

追い掛けてくる空島の住人をまいて、無事に"神の島"を出航した麦わらの一味は、下層の"白海"に居た。
メリー号の隣には、ラッパの音も賑やかなウェイバーに乗ったパガヤとコニス。
甲板に積み込まれた黄金を前にして、ルフィが銅像を買おうと言い出したり、ウソップが大砲を増やすべきだと言い張り、サンジは鍵つき冷蔵庫を、チョッパーは他の国の医学の本、ゾロは酒が欲しいと騒ぐ。
その様子を、マルロスはロビンと並んで階段に腰を下ろし眺めていた。
ロビンは、何か考え事をしているような眼差しで、ルフィ達の騒ぎを眺めながらも何処か上の空だ。

「ロビンさん?」

「……ごめんなさい、何でもないわ」

不思議そうなマルロスに、ロビンは小さく笑う。

「みなさん!前方をご覧下さい、見えました、"雲の果て"です!」

「へ――――!あそこから降りられるのかーっ!!」

コニス達は、麦わらの一味を無事に青海に送るため、"雲の果て"と呼ばれる場所まで案内してくれたのだ。
船首甲板に集まった一味は、ついに降りる時が来て、少し名残惜しく思う。

「―――あの門抜けたら………"雲の川"で一路青海って具合か……」

「また来れるかしら、"空島"…!!」

「ここばかりはなー……」

いよいよその時が迫り、ウェイバーを降りて船の横を走りながらパガヤ達が、急いで帆を畳んで船体にしがみつくようにと言う。
7000mの坂道だもんな、と言われた通り急いで帆を畳み、黄金も部屋の中に片付ける。
と、空に一緒に連れてきてしまったサウスバードが突っ込んできた。

「―――さて……船長、次の島への記録もバッチリ!!」

「んん、そうだ!!ここ降りたらまた新しい冒険が!!始まるんだ!!野郎共、そんじゃあ……!!青海へ帰るぞォ!!!」

「おお!!」

「みなさん、落下中お気をつけて!!」

「落下中??」

コニスの言葉の直後、メリー号は空へスポーンと飛び出していた。
ああああぁぁぁ、と悲鳴を上げる一味の中、マルロスはまさか落ちるとは思ってなかった、とやけに冷静で。

「へそ!!!!」

笑顔で見送るパガヤとコニスの姿も、一瞬で見えなくなる。
と、仲間の悲鳴の合間に何か笛のような音を聴きつけたマルロスは、その直後、空島の土台となっている海雲からタコが飛び出して来たのに驚いた。
ぶわり、とその巨大な身体を広げたタコは、そのままメリー号の船体に覆い被さる。
すると、ガクンと落下の速度が緩やかになり、よくよく見ればタコは風船のように膨らんでいる。
その時だった、あの黄金の鐘の音色が再び聴こえたのは。
カラァー…ン、カラァー…ンと何度も鳴り響く鐘の音色に、麦わらの一味は空島のみんなが見送りの代わりに鳴らしているのだと判る。
ふわりふわりと、ゆっくり空を降下していくメリー号の甲板から、もう殆んど見えなくなった空島を見上げる。



ふと見上げると目に映る空
夢か現か雲の上の神の国―――

遥か上空1万m
耳を澄ますと聞こえる鐘の音

今日も鳴る
明日もまた鳴る

空高々に鳴る鐘の音が
さまよう大地を
誇り
歌う




 

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