広い世界の夢物語
2
「マルロス?」
不意に聞こえたのは、サンジのものだった。
2人の姿が見えないことに気付いて、落ち着かなくなって探していたのだ。
「…………邪魔したか?」
「ううん、大丈夫だけど……何かあった?」
「いや……」
決まり悪そうなサンジに、マルロスは首を傾げる。
そんなマルロスの頭を撫で、ゾロはサンジの横を通り抜ける。
すれ違う瞬間、足を止めたゾロはサンジの顔を見ずに言う。
「マルロスを泣かせたら、おれが拐うからな」
「は?」
意味が判らない、と言いたげなサンジは無視してゾロはその場を立ち去る。
その背中を見送って、サンジはマルロスに向き直る。
「あー………その……今の、マリモの言い方だと、さ……」
「ふふっ……うん、ゾロの気持ちには応えられないって、振っちゃった」
何処かスッキリした顔で、あっけらかんと告げられた真実に、サンジは目を見張る。
「正直に言えばね、私から誰かを恋慕うことはこれが初めてだから……よく判らないことだらけだけど、サンジが言っただろう?好きだから護りたいって」
「あぁ……」
「同じことを、私もサンジに想うんだ。気付いたのはつい最近だけどね」
「え?じゃあ……」
「うん。私はサンジが好きだ」
あっさりと告げられた事実に、サンジはしばし固まる。
微笑みさえ浮かべているマルロスに、サンジはじわじわと指先から実感が湧き上がる。
「私は、護られているだけなんて御免だから、サンジが私を護ってくれるなら私はサンジを護りたい」
「当たり前だろ、マルロスはおれが護る……ナミさんとロビンちゃんも、だけど」
「ふふっ、サンジの正直なところは好きだよ。うん、それでも構わないよ……サンジのそういうところには苦労するかもしれないけど、それでも私はサンジと生きたい」
「っ、すげェ殺し文句……」
顔を真っ赤にさせたサンジに、マルロスはくすくすと楽しげに笑う。
それでも、ようやくマルロスの想いを実感したサンジは、ゆっくりとマルロスに歩み寄る。
手を繋いで、確かめるようにマルロスの細い身体を抱き締めたサンジに、マルロスは小さく笑みを浮かべる。
服越しに伝わる体温と鼓動に、こんなにも安心している自分に気付いて、サンジも同じことを思ってくれていたら、とマルロスは思う。
[*前へ][次へ#]
無料HPエムペ!