広い世界の夢物語 戦いの後 鐘は、ルフィに殴られた衝撃で小さな島雲から空に飛び出し、エネルの後を追うように落ちていった。 だが、それを気に掛けている余裕はなかった。 下層の遺跡に叩き落とされたゾロの元へ駆け付けると、刀を肩に預けて座り込んでいたゾロが顎で傍らを示す。 そこには、全てが終わった安堵から意識を飛ばしたワイパーが倒れていて、ゾロは自分より先にそいつを手当てしてくれ、とチョッパーに頼む。 サンジが義理はねェぞと言ったが、ゾロは何やら必死だったからと曖昧に答える。 チョッパーは、急いでワイパーの処置を始める。 その傍らに腰を下ろして、ウソップ達は、結局黄金は手に入らなかったなと笑い合う。 おれ達の貧乏航海は続くわけだと、軽く肩を竦めたゾロにマルロスも微笑む。 ウソップは、黄金より貝が欲しいと言っている。 そんなクルー達から少し離れたところで、ロビンは何処かスッキリしたような表情を浮かべていた。 ワイパーの処置を終わらせて、チョッパーはクルーの手当てに移る。 ゾロ、サンジ、ロビンを優先させたマルロスは、わざと一番最後に手当てを受けた。 全身の火傷の手当てをし、他に怪我はないかと確認したチョッパーに、マルロスは気まずそうに右手を差し出す。 「…………親指の関節、外れてます」 「なっ!?何されたんだ!?マルロス!!」 「いえ……これは自分で」 「は!?」 目を丸くさせたクルー達に、マルロスは言いにくそうに事情を説明する。 右手に手枷を嵌められ、抜け出すために無理矢理自分で関節を外した、と言うマルロスにチョッパーはバカ!!と怒鳴る。 「そんなことしたら、元に戻らなくなる可能性だってあるんだぞ!?今回は比較的、綺麗に外れたみたいだから炎症を起こしてるだけで済んでるけど」 「う………ごめんなさい……でも、他に方法がなくて……」 「あ、怒鳴ってごめん。でも、マルロスはもっと自分を大事にした方がいいぞ……関節嵌めるから、痛むけど我慢してくれ」 「うん」 炎症を起こして腫れている親指を、チョッパーは手早く元通りに嵌める。 痛みに顔を歪めていたマルロスも、元通りちゃんと動くかだけを確認して、親指をしっかりと固定する。 火傷をした箇所もあるため湿布を貼ることは出来ないので、ロビンが持っていた水筒に残っていた水でタオルを濡らし、包帯の上から冷やす。 2、3日はそうやって冷やしながら動かさないようにと言われて、マルロスは素直に頷く。 [次へ#] |