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広い世界の夢物語
10

進路を新しい"雲の川"に取り、しばらくすると船は森を出る。
そこでナミが新しいウェイバーに乗り、実際に操ってみせる。
それは、エンジェルビーチでパガヤのウェイバーに乗った時のものより速く、スピードは格段の差がある。

「段違いのスピードね……!!」

「ええ。"噴風貝"は数百年前の絶滅種でして、私も驚きましたよ」

船縁から海上のナミに、パガヤがそう答える。
最高速度はもっと出る、と説明を受けたナミだが、今それを試す気にはならなかった。
速すぎて少し怖かった、とも言う。
そして、話は自然とこれからのことになるが、取り敢えず仲間と合流するのが先だ。
約束通り北東の海岸へと船を進めながら、ナミは船に上がる。

「あの4人が揃ってれば、敵もないわよ……」

「"4人組"なんて、島にいないよ」

「え?」

「多くても2人組……4人で動いてる奴らがいたら、わかるもん、あたい!」

甲板で、膝を抱えていたシャンディアの少女の言葉に、ナミが彼女が"心綱"を使えるのだと気付いた。
生まれつきその力が使えると言う少女は、だんだん消えていく"声"に震えている。

「アイサさんは……ウェイバーが壊れたらしくて、空魚に襲われているところを私達が通りかかって……」

「何するつもりだったのよ」

「知らない!!……でも、じっとしてられないじゃないかっ!!」

膝に顔を埋め、少女、アイサは涙を流す。
その小さな背中を見つめて、ナミは島にいる仲間の無事を案じる。
しばらく泣いていたアイサは、不意に何か覚悟を決めたように立ち上がると、船の縁によじ登る。

「ちょっと……!!ダメよ!!」

ナミの止める声を無視して、アイサは海に飛び込む。
慌ててナミが後を追い、何とかアイサを抱えて引き止める。
みんなを助けるんだ、と騒ぐアイサをウェイバーに何とか乗せたナミ達の背後で、不意にそれは顔を上げた。
イライラした様子で、メリー号を睨む大蛇。
と、その大蛇が突然苦痛の叫びを上げたかと思うと、暴れ始める。

「いやあああ〜〜〜っ!!」

咄嗟にウェイバーを発進させたナミは、腰にアイサをひっつけたまま森の中へ。
大蛇もその後を追うように、苦しみ悶えながら森へ消える。
メリー号には、コニスとパガヤが残された。
しかし、残されたコニス達にはどうしようもないと、とにかく集合場所までメリー号を運ぶことにする。


 

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