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広い世界の夢物語


意識がないマルロスを、エネルは無造作に放り投げる。
ドサッ、と落ちたマルロスは、その衝撃で目を覚ました。

「ぅ……っ」

うっすらと目を開けば、そこはメリー号とは違う船の甲板だった。
絨毯が敷かれたそこに倒れたマルロスは、上手く言うことをきかない身体を起こす。
まだ少し痺れている身体に鞭を打ち、何とか起き上がったマルロスに、エネルは目が覚めたかと声をかける。
その声に振り向いたマルロスだが、現状が把握出来ていない今は睨むだけ。
エネルから感じる雷の気配に、自分が意識を失う原因になったのがこの男だと、マルロスは本能的に理解する。

「……………人質、のつもりですか?」

「ヤハハハ、人質など無意味。お前は私のものにする、ゲーム参加者から除外してな」

「………ゲーム?」

「何のことはない、ただのサバイバルだ」

含みを持たせた笑みを浮かべ、エネルはマルロスに歩み寄る。
逃げようとしたマルロスだが、まだ身体が思うように動かないせいで、簡単に捕まってしまった。
ぐいっ、と髪を掴まれ、じっくりとその顔を覗き込むエネルの顔を、マルロスは睨み付けた。

「ふむ、なかなか美しい瞳だな……宝石のようじゃあないか。気が強いのも悪くない」

こんな男に褒められても嬉しくない、とマルロスはエネルを睨む。
サンジやゾロ、ルフィ達に宝石みたいな瞳だと言われた時は、あんなにも嬉しかったのに。
まるで汚されたように思え、マルロスは唇を噛む。

「…………さて、そろそろ私も行かねば」

掴んだままのマルロスの髪を離して、エネルは立ち上がる。
拘束されていない今なら、逃げるチャンスだとマルロスが隙を伺っていると、それを察したエネルはマルロスの腕を掴む。
そのままマルロスを引きずっていくと、黄金で出来た壁の前にマルロスを連れていく。
そして、マルロスの右手を壁に押さえ付けると、電熱で黄金を溶かしてマルロスの手首に枷を作る。

「あ゛あぁあああ!!」

電の力で高熱になった黄金の枷が、マルロスの手首を焼く。
堪えきれない熱さと痛みに、マルロスが悲鳴を上げる。
その苦痛に歪んだ顔を、エネルは満足げに笑って見ている。
熱さと痛みに息を荒らげたマルロスは、遠退きかけた意識を何とか繋ぎ止める。

「ゲームが終わるまで大人しくしていることだな」

そう言い残し、エネルは姿を消す。
呼吸を落ち着けようと、深呼吸するマルロスは、エネルの気配がなくなってから辺りを見回してみる。
よく判らないものがある甲板、それらを冷めた目で眺めたマルロスは、自身の右手に視線を向ける。
電熱で皮膚が焼け、枷に張り付いて動かせない。

「…………参ったな……」

その気になれば、たぶん逃げることも出来なくはない。
だけど、今逃げ出すことは得策じゃないと判断したマルロスだが、他のクルーの状況が判らないことが気持ちを逸らせる。
サンジ達は無事だろうか、と思いを馳せる。



 

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