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広い世界の夢物語


ぐったり、と甲板に倒れ込んだクルーの中で、唐突にナミが飛び起きる。

「わかった……」

疑問をぶつけるゾロに、ナミは山に登る方法に気付く。
話を聞くと、レッドラインとグランドラインに区切られた4つの海の大きな海流が、運河をかけ登り頂上からグランドラインに流れ出ているから、その海流を利用するらしい。
この世界に疎いため、マルロスにはよく判らない部分もいくらかあったけれど、とにかく今メリー号が乗っている海流がグランドラインに続く海流で、失敗すると船が大破することは判った。
判らなかったところは、あとで時間を見つけてナミに直接聞いてみよう、とマルロスは考えながら立ち上がる。

「聞いたことねェよ、船で山越えなんて」

ゾロの呟きに返したサンジが、聞いたと言う話によれば、グランドラインには入る前に半分死ぬ、と言われているらしい。
海賊の墓場、とさえ言われているらしいグランドラインのことを考えると、一筋縄ではいかない場所なんだと改めて実感させられる。

「不思議山が見えたぞ!!」

怒鳴るルフィの声に、メリーの前方へと目を向ければ雲で頂上の見えない壁が見え、それが世界を分かつ壁だと言うのも頷ける。
海流に乗って、運河の入り口へと吸い込まれていくメリー号の船首甲板で、ルフィが嵐にも負けない大声で指示を出す。
その傍らで、マルロスは唖然と運河を見つめる。
山肌をかけ登る海流は、運河と呼ぶにはあまりにも荒々しく、一直線に頂上へとかけ登っていく。

「もうちょっと右!!右!!」

「右!?おもかじだァ」

ウソップとサンジが、2人がかりで舵を切る。
唖然としたまま、山肌をかけ登る運河を見つめていたマルロスの耳に、気合いの入った2人の声が聞こえた次の瞬間。
ボキィッ、と不吉な音が届く。
振り向くまでもなく、強い海流に乗ったメリー号の舵を力任せに切るには、あまりに負荷が強すぎて折れたのだろう。

「っ、前!!」

「ぶつかる――――っ!!!!」

マルロスの声に重なるように、誰かの叫び声が響く中、ルフィが走り出す。
ゾロに麦わら帽子を預け、大きく息を吸い込んで腹を膨らませたルフィが、運河の入り口にある柱とメリーの間に飛び込む。
ゴム風船となったルフィが、柱に衝突しそうになったメリー号のクッションになり、登る海流へと跳ね返す。

「助かった!!」

「ルフィ捕まれ!!」

手摺から身を乗り出し、手を伸ばすゾロの手をルフィががっしりと掴み、伸びた腕が戻る反動でルフィが甲板に飛んできて頭から突っ込む。
甲板に穴が空いて、舵が折れてしまったけど、船は海流に乗って運河をかけ登る。

「入ったァ―――っ!!!」

歓声が甲板に響き渡り、ずっと冷や冷やしていたマルロスも安堵して肩の力を抜き、喜んでいるクルーの顔を見回す。


 

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あきゅろす。
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