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広い世界の夢物語


蹴り破った酒樽を片付け、雨に濡れた服を着替えようと一度男部屋に下りたマルロスは、ふと上着を脱いでいた手を止める。
濡れた上着、長衣を脱いだだけでは気付かなかったが、その下に着ていた短衣に手を掛けて初めて気付いたのだ。

「マルロス?」

不意に手を止めたマルロスに、同じように濡れたスーツを着替えていたサンジが不思議そうに声を掛けると、マルロスは笑みを浮かべて首を振る。
脱ぎかけた手を止めたまま、何でもないと言って、わざとらしく買ってきた服を選ぶように袋を覗く。
直感的に、サンジは今は側にいてほしくないんだろうと感じ取り、先にラウンジに戻ると言い置いて部屋を出る。
そんなサンジの心遣いに、マルロスは申し訳なさそうな笑みを浮かべて頷き、もう一度服に手を掛ける。
濡れた薄手の短衣を脱げば、男にしては少し華奢な体躯が露になる。
華奢とは言え、元は武官であったマルロスの身体は目立たないながらもしなやかな筋肉に覆われ、すっきりと引き締まった身体をしている。
だけどその身体は、酷い火傷の痕や、何か大きな動物の爪にでも引き裂かれたような傷跡、斬り傷が縦横に走っている。
しなやかに引き締まった身体には、あまりに不釣り合いな手酷い傷跡。

「……………新たな身体ではなく、再生された身体だから……傷跡が残っていてもおかしくはない、か……」

一度は命を落とした身、まして戦いで負った怪我が元だった。
選択を与えられた時、生まれた世界に帰ることを選んだことで身体の傷を癒してもらったが、跡が残っていることを忘れていた。


 

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あきゅろす。
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