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広い世界の夢物語
12

クリケットは、大事なのはタイミングだと言う。
そもそも、海流に突き上げられると言う状況も、イメージする程さわやかな空の旅にはならないと。

「"突き上げる海流"はいわば、災害だ。本来、断固回避すべき対象なのさ」

その言葉に、ウソップが息を呑んだ。

「あの、一体どういう原理で、海流が上へ上がるんですか?」

「そうよ、私達、今までそんなの聞いた事もなかったし……」

疑問を口にするマルロスとナミに、クリケットはその原理は予測の域を越えない、と答える。

「海底のより深くに大空洞があり、そこに低温の海水が流れ込む。下からの地熱で生じた膨大な蒸気の圧力は、海底での爆発を引き起こす。それは海を吹き飛ばし、空への"海流"をも生み出す程の"大爆発"だ。時間にして約1分間、海は空へ上昇し続ける」

「1分間………水が立ち登るって、どういう規模の爆発!?」

唖然とするナミ達に、クリケットは更に説明を続ける。
爆発の場所は毎回違い、頻度は月に5回。
コッパ微塵になれってのか、と震えるウソップに、雄大な自然現象を言葉や理屈で言い表すことなど愚かな事だ、とクリケットは言う。
それにウソップが、その海流の上空にうまく"空島"がやってこなきゃ、と不安げに訊ねれば。

「ああ、飛び損だな。そのまま何にひっかかる事もなく、海面に叩きつけられて全員海の藻屑だ――――もっとも"積帝雲"にうまく突っ込めた所で、そこに"空島"が存在しなきゃ結果は同じかも知れねェが」

クリケットの言葉に、ウソップは完全にビビってしまった。
震えながら、ルフィに空笑いしながら諦めようと言う。

「ははは!!あ〜〜〜……!!残念だなルフィ、こりゃ無理だぜ。なにせおめェ、ラッキーの中のラッキーの中のラッキーの中のラッキー、くらいのラッキー野郎じゃなきゃ行けねェ、って話だ」

「大丈夫さ、行こう」

うはははは、と笑いながら言い切ったルフィに、ウソップは涙を流しながらメリー号を示す。
G・M号の痛々しい姿を見ろ、と言いながら、このままじゃ巨大な災害に立ち向かえない、と訴える。
それを聞いたクリケットも、たとえメリー号が新品の状態でも強度やらの不足で無理だ、と教える。
一度は憤慨したウソップだが、ムリなら仕方ないと納得しようとしたら、クリケットは不足分はマシラとショウジョウに事前に船を強化させ、進航の補助をさせると言う。
任せろおめェら、と家の窓から身を乗り出して叫ぶ2人に、ルフィはよろしくなーと両手を挙げて喜ぶ。
その背中を見つめるウソップとナミの心境を、マルロスは余計なマネをとでも思ってるんだろうな、と苦く笑う。
行く気満々のルフィに、ナミがこの島にいられるのはあとせいぜい一日だ、と言う。
ウソップがそれを聞いて、間に合わねェよと言い、クリケットに確認すると。

「明日の昼だな。行くならしっかり準備しろ」

「間に合うじゃねェかァ〜!!」

叫んだウソップに、イヤならやめちまえとクリケットが言う。


 

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