広い世界の夢物語
9
マルロスが叫ぶのと同時に、轟音と共に閃光が広場を包み込んだ。
思わず、広場に居た誰もが閃光から目を庇っている内に、一瞬の閃光は消え去る。
後には、真っ黒に焦げた死刑台がゆっくりと崩れ落ち、剣を振り上げていたバギーが黒焦げで倒れる。
そして空から、ルフィの麦わら帽子がひらひらと落ちてくる。
「…………………」
一体どんな偶然なのか、ルフィの首を落とそうと振り下ろされた剣に、黒く曇った空から雷が落ちるなんて。
立ち尽くす人々に、降り注ぐ雨は勢いを増す。
そんな中、ピチャ…と水溜まりを踏んで落ちた麦わら帽子を拾い上げて、雷に打たれたはずのルフィが笑う。
「なははは、やっぱ生きてた。もうけっ」
「………嘘………」
崩れ落ちた死刑台の前で、呑気に笑うルフィを見てマルロスが小さく呟けば、立ち尽くす人混みを掻き分けてサンジとゾロが現れる。
「おい、お前神を信じるか?」
「バカ言ってねェで、さっさとこの町出るぞ。もう一騒動ありそうだ」
サンジの言葉を、ゾロは馬鹿にしたようにあしらう。
どんな偶然にせよ、ルフィは無事に生きていた。
だが、いつまでもここに居るわけにはいかない、とゾロは刀を納める。
「広場を包囲!!海賊どもを追い込め!!」
「きたっ!!逃げろォ!!」
海軍の怒鳴り声に、ルフィ達3人は素早く反応する。
雷に打たれたルフィが無事だったことに、呆然と立ち尽くしていたマルロスの腕をサンジが掴み、火の消えた煙草を吐き捨て走り出す。
「おらマルロス、走れっ!!」
「ぇ、わっ!!」
つんのめりながら、サンジに腕を引かれて走り出したマルロスは、先頭を走るルフィの背中を見つめる。
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