広い世界の夢物語
6
「美味しいわ、剣士さん」
「ありがとうございます。ところで、その剣士さんってやめません?ゾロと区別が……」
「ごめんなさい、癖なの。何て呼べばいいかしら?」
「そうですね……名前で呼びたくないのであれば、エルフで構いませんよ」
「エルフ?お伽噺の?」
首を傾げるロビンに、マルロスは微笑んで首を振る。
マルロスは、お伽噺に出てくる空想のエルフではなく、本物のエルフである。
そこで初めて、マルロスは自分のことを話し始める。
まだ誰にも話していない、あの夏至の夜のことはもちろん伏せて話した。
最初は疑っていたロビンだが、マルロスが不意に言葉を変えたことで、その話を信じることにした。
「クゥエンヤだったかしら?とても美しい響きの言葉ね」
「もうひとつのアルダのエルフの古語です。使うことはもう殆んどないですが、忘れることはないですからね」
「考古学者としては、古語であるクゥエンヤもだけど歴史にも興味があるわ。どんな文化を築いたのかも」
「そうですか?それなら、私の判る限りでよければいつでもお話ししますよ」
にこやかにお茶をしながら、それならもっと時間のある時に聞きたいわ、と言うロビンとマルロスは昔話の約束をする。
「そう言えば、さっき何か聞こえてきませんでしか?」
「おサルさんよ。さっきの沈んだ船をサルベージをするらしいわ、航海士さん達は見学してるわよ」
「ルフィ達は?」
「まだ海の中よ。でも、大丈夫よ、きっと」
そうですね、とのんびりと答えたマルロスは紅茶のおかわりをロビンのカップに注ぎ、自分のカップにも注ぐ。
そんな穏やかな時間も、長くは続かないのがいつものことである。
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