広い世界の夢物語 10 ルフィを失うのかと思った、その恐怖はまだ消えない。 主君や親友のように、ルフィはもちろん、クルーの誰も失いたくないと強く思う。 彼らは人の子だから、いずれマルロスより先に逝く運命ではあるけれど、失いたくないとマルロスは思った。 先を走るルフィとゾロも、腕を引いて走るサンジも船に居るナミもウソップも、誰一人失いたくない。 主君や親友を失った悲しみは、マルロスの胸にまだ深く刻まれている。 せめてこの傷が癒えるまでは、ルフィ達を失いたくないと考えて、マルロスは走りながら俯いて唇を噛む。 自分勝手な考えだと、自己嫌悪したのだ。 そんな考えを捨てるように頭を振って、マルロスは先を走る2人に置いていかれないよう、激しい雨の中を走る。 激しい雨の中、人気が全くなくなった街路を駆け抜ける。 船を停めた西の港まで、あとどれくらいだったろうかと考えながら走るマルロスには、後ろから追い掛けてくる海兵の怒鳴り声は聞こえていない。 「しつこいなあいつら、止まって戦うか」 「やめとけ、キリがねェ。それにナミさんが早く船に戻れっつてたんだ」 ルフィに言い返したサンジが、街路の先に一人の女性を見つけて目を輝かせる。 ゾロを名指し、何やら因縁があるかのように怒る彼女に、ゾロが刀を抜く。 同じく刀を抜いたたしぎと鍔競り合い、戦い始めたゾロ達の横を走り抜け、レディに手を出したゾロに憤るサンジを引き摺るルフィと並んで、マルロスは港を目指して走る。 ちらりと後ろを見たが、ゾロにも敗けない剣技を見せるたしぎにマルロスも感心し、遠ざかったゾロにまだ憤るサンジに少し呆れる。 [*前へ][次へ#] |