広い世界の夢物語
1
「あ、来た来た」
不意にそう言って、デッキチェアで寛いでいたナミが身体を起こし立ち上がると、新聞売りのカモメを呼ぶ。
「また値上がりしたの?ちょっと高いんじゃない?あんたんとこ」
「クー」
申し訳なさそうなカモメに、今度あげたらもう買わないからと宣言してから、ナミはカモメの鞄にお金を入れる。
側で聞いていたウソップは、たかが新聞の一部や二部で文句を言うなと言いたそうだが、バカにならないために新聞は必要だと言い返される。
マルロスはそんな2人の話を聞きながら、遠ざかっていく新聞売りのカモメを眺める。
タバスコ星なる物を開発中のウソップは、実験道具とキッチンから持ってきたタバスコの瓶を蓋を開け、ビンボー海賊なんていやだと言うナミを黙らせる。
「これを目に受けた敵はひとたまりもなく……」
「さわるなァ!!!!」
「うわァ!!」
サンジの怒鳴り声が響くのと同時に、タバスコの瓶を構えていたウソップに飛んできたルフィが直撃する。
どんな偶然か、持っていたタバスコ瓶の中身が見事にウソップの目に掛かる。
「ぎいやああああああ!!!!!!」
ウソップの叫び声に、海を眺めていたマルロスが驚いて振り返れば、叫ぶウソップを無視してルフィがサンジに食って掛かっている。
どうやら、サンジが警備するナミのみかん畑からルフィがみかんを盗もうとして、サンジに蹴り飛ばされてウソップに激突したらしい。
目にタバスコが掛かって、激痛に叫ぶウソップには誰も見向きしない。
蹴り飛ばされたルフィも、みかんを食べれないのは残念そうではあるが、機嫌が良いのか笑って素直に諦める。
「まーいいや、俺は今うれしいから。マルロスも仲間になったことだし、いよいよグランドラインだ!!」
「グランドライン……」
昨日の内に、マルロスはナミから簡単に世界の事を教えてもらっているが、グランドラインに関しては詳しいことは判らないと聞いている。
どんな海なのだろう、とマルロスが船から見える海を眺めながら考えていたら、今度はゾロ以外のクルーの叫びが響いた。
「今度はどうしたんです?」
「マルロス!!ほら、これ見てくれ!!」
どーん、とルフィが胸を張って差し出した一枚の紙には、満面の笑顔のルフィの顔がある。
「なっはっはっは、おれ達はお尋ね者になったぞ!!3千万ベリーだってよ!!」
賞金首になったことに、ルフィは嬉しそうに笑う。
ただ、ルフィの手配書を見せられたマルロスは、それがどういう意味なのかいまいち判っていない。
もちろん、海賊とは海の無法者だということはナミから教えられているが、実際どんなものかが判らないのだ。
ルフィ達を見ている限りでは、とても無法者とは思えないせいもある。
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