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広い世界の夢物語


紙袋をいくつも下げて、意気揚々と服屋を何軒も覗くナミに付き合いながら、マルロスも町並みに目を配る。
人波は絶えることなく、様々な店も賑わいを見せている。
賑やかな町並みを眺めれば、少しだけあの日々を思い出してしまうけど今は隣を歩くナミに置いていかれないよう、思い出に浸っているわけにはいかない。
一方のナミは、通り沿いのいろいろな服屋を見て回りながら、道行く人が振り返ることに優越感を感じていた。
背が高いこともあるが、美しい煌めきの黄金色の髪を揺らして歩くマルロスは、どうしたって人目を惹く存在なのだ。
煌めく髪だけでなく、中性的で何処か神秘的な雰囲気さえ漂う顔立ちで、しなやかな体躯の美人なのだ。
人が振り返る程の美人を連れて歩いてる、それがナミの優越感を刺激するのだ。
もっとも、マルロスは人が振り返る程の美人だが、れっきとした男である。
女の自分より男のマルロスが目立つことは少し悔しいが、人からのそういった視線には無自覚のマルロスは、ナミに腕を引かれながら興味深そうに町並みを見ている。

「マルロス、あそこの店に入るわよ」

あちこちを見回すマルロスに、ナミは振り返ってそう告げる。
微笑んで頷いたマルロスは、ナミに手を引かれながらいくつもの紙袋を持ち直して、カジュアルな服を売っている店に入る。
山程の服を抱え、何着も試着して気に入る服を探しているナミを、マルロスは笑顔で付き合っている。
カーテンを何度も開けては、マルロスに似合うかどうか確かめては、また新しい服に着替えて見せる。
付き合うマルロスも、ナミに対して失礼にならないように、適当な返事はしない。

「よしっ、取り敢えずこんなもんかな」

「………これ全部ですか?」

「そうよ?大丈夫、お金ならあるから」

そう言って、ナミは山のように積み上がった洋服をレジに持っていけば、店のおばちゃんもマルロスと同じ反応をする。
まぁ、無理もない。

「またよろしくねーっ」

ご機嫌なおばちゃんに見送られて、大量の服を抱えたナミと並んで店を出る。


 

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あきゅろす。
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