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広い世界の夢物語


「あ、あれなんてどう?色も綺麗だし、デザインもシンプルで良いと思わない?」

「綺麗な空色ですね、動きやすそうですし」

「チャイナ風だから少し女物っぽいけど、パッと見ただけじゃ判らないわよ。取り敢えず着てみて」

「あ、はい」

試着室に押し込まれたマルロスは、多少戸惑いながらもカーテンの向こうから渡された服を受け取り、長衣を脱いで下に着ていた短衣に手を掛ける。

「重ねても大丈夫、かな?」

デザイン的にも、重ねても違和感もないだろうと思い直し、短衣の上から袖を通す。
サラリとした肌触りで、柔らかい生地のチャイナ風の服に、マルロスも新しい服の感触に微笑む。
試着室の中にある鏡を見て、今まで着ていた服と比べてもそれ程の違和感もなく、実際に着てみた印象も悪くない。
袖や丈の長さを確かめ、少し腕を動かして動きやすさを確かめてから、マルロスはそっとカーテンを開く。

「あらマルロス、よく似合ってるじゃない!!色も良いし、デザインもバッチリね。袖の長さとかは大丈夫?」

「ありがとうございます。そうですね、デザインは細身ですけど大丈夫です」

「じゃあ、他の色やデザインも合わせてみましょ」

そう言って、ナミはマルロスが着替えている間に見付けた何着かをまとめて渡し、次々に着替えさせる。
着せ替え人形のように、何着もいろいろな服に着せ替えさせられながら、マルロスはふと仕えていた主君の姫君を思い出す。
あの姫様にも、暇潰しにとよく着せ替え人形のように遊ばれたなぁ、と懐かしく思いながら服を着替える。

「これも良いわね。このグリーンも似合いそう、裾の赤い華の刺繍が綺麗。ロング丈も良さそうだし……こっちのロングコートも良いわね」

カーテンの向こう側から、楽しそうなナミの声が聞こえる。
姫様にそっくりな、その楽しげな声にマルロスは多少の苦笑いを浮かべながら、嫌だとは言わずに何度も着替えを繰り返す。
慣れたもので、2時間近く着せ替え人形になってもマルロス自身は疲れた表情もせず、本人よりも満足そうなナミと連れ立って店を後にする。

「ありがとうございました!!」

店員総出の見送りに、ナミは気分良さそうに鼻唄混じりにマルロスの腕を引き、今度は自分の服を見に行くと言う。


 

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