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広い世界の夢物語


涙を堪えているのか、顔を伏せて押し殺した声音で呟くように言葉を紡いだマルロスに、心配そうにルフィがその色の白い華奢な手を握る。
ルフィ達は直感的に、マルロスの悲しみを感じ取っていた。
産まれた世界を失い、それから生きていた世界では大切なもの全てを失い、そうして与えられた2つの選択。
どちらを選ぶにせよ、それはマルロスにとってひどく辛い選択であっただろうことは明白で、誰もが眉を潜める。
悲しげな表情のまま、マルロスはゆっくりと話を進める。

「私が産まれた世界へ帰ることを選べたことにも、もちろん理由があります。本来私が生きるべき世界、つまり私が産まれた世界は私がもうひとつのアルダへ送られてすぐ、悪によって全てが滅び去り唯一なる神も力を失い消えてしまいました。ですが、世界はまだ死んでいなかったのです」

その世界に生きる者は、動植物の分け隔てなくその全てが滅びてしまい、悪そのものも時間と共に潰えてしまったのに。
それでもまだ、世界そのものは生きていた。
世界そのものの生命力により、長い長い時間をかけて再生していったその世界には、新たな命が産まれ育ち始めた。
ただ、神に似せて造られたエルフ族と言う種族は、既に絶えてしまったらしい。

「それでも私は、産まれた世界で生きることを選びました……お仕えしていた主君も、かけがえのない親友も、私が生きることを望んでくれたから……だから私は、この世界に帰ってきたのです」

「へェ……え!?この世界!?」

一瞬聞き流してから、改めて驚いたようにウソップがマルロスに問い返すと、マルロスは小さく笑みを浮かべて頷いた。
マルロスが口に出すまで、もうひとつのアルダと言う世界はここではない別の世界だと思っていたのか、頷いたマルロスにウソップとルフィが驚く。
ナミやサンジにゾロは、話の途中で薄々感づいていたらしく大して驚きはしなかったが、それでもやはり驚きは隠せない。


 

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