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広い世界の夢物語


そんなマルロスの、短くなった髪の指通りを楽しむように弄るナミを見ていたビビが、横から声をかける。

「香油、ですか?アラバスタの女性も髪の手入れに香油を使うんですよ。乾いた空気と強い日差しに髪が傷まないように」

「そうなんですか?」

「えぇ。ちょっと待っててくださいね」

そう言って、ビビが部屋を出るのを見送ったマルロスに、側でずっと見ていたウソップが首を傾げる。

「男なのに、髪の手入れとかしてたのか?」

「髪を綺麗に保つのも、エルフのたしなみだよ。男も女も関係なく、皆が自分の好きな香りの香油で手入れしてたよ」

ふわりと微笑んで、簡単にそう説明したマルロスの言葉に、ウソップはふぅんと頷く。
それを聞いて、チョッパーがマルロスの膝に上って首筋に鼻を寄せ、すんすんと匂いを嗅ぐ。
くすぐったそうに身を捩ったマルロスに、何か納得したようにチョッパーが少し離れる。

「マルロスっていつもいい匂いがしてるけど、たぶんその香油の匂いが残ってるんだな。優しい花の匂いがする」

「そうですか?確かに、向こうではリススインという花の香油を使ってましたけど」

この世界に来てからは使っていないのに、本当に匂いが残っているのだろうか、とマルロスは首を傾げる。
チョッパーの鼻だから判るのだろうか、と膝の上のチョッパーと目を合わせる。

「マルロスさん」

「ビビさん。それがアラバスタの香油ですか?」

「はい。アルバーナで一番人気のあるもので、サンドローズというアラバスタの土壌に合わせて品種改良した、バラの香油なんです」

小瓶を差し出したビビは、蓋を開けて、マルロスの手の平に少し垂らす。
途端に、ふわりと優しいバラの香りが辺りに漂う。
さらりとした香油はべたつきもなく、試しにマルロスは髪に馴染ませる。
するりと髪に馴染み、それだけで上質な香油だと判ったマルロスは、その少し甘い香りを吸い込む。

「いい匂いね」

「髪によく馴染むけど、べたつきがないのが人気なんです。ものによっては、髪がべたついてしまうこともあるので」

試しにナミさんも、とビビがナミの髪に香油を馴染ませる。
軽いマッサージを加えると、より髪の手入れにはいいと話すビビの言葉を聞きながら、マルロスは手の平にあった香油を髪に馴染ませる。


 

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