広い世界の夢物語
6
王城内に入り込んでいたオークや狼の群れを蹴散らし、マルロスはトゥアゴンの姿を探して城内を駆け回った。
返り血にも構わず、血糊で剣の切れ味が鈍くならないように倒した後には大きく振って血を飛ばし、時には邪魔だと言わんばかりにオークを蹴り飛ばす。
階段を駆け上がり、王の間へ辿り着いたマルロスが見たのは、オークの群れが王の間で暴れまわっている様だった。
「邪魔だ貴様ら、退けっ!!」
マルロスには珍しく、口調も荒く声を張り上げて王の間に入り込んだオークの群れに飛び込むと、両手に持った双剣を振るってトゥアゴンを探す。
王の間の奥から聞こえる剣戟の音に、マルロスはオークの群れを蹴散らして駆け寄ると、主君のトゥアゴンがオークと戦っているのを見つける。
「トゥアゴン様!!」
「っ、マルロス!!」
駆けつけたマルロスは、トゥアゴンを取り囲んでいるオークを瞬く間に斬り伏せ、周囲から遠ざける。
双剣を構え、トゥアゴンを背後に庇いながらオークの群れに立ち塞がるマルロスに、トゥアゴンは血に濡れた剣を下ろす。
あちこち怪我を負っているし、城内を駆け回ったせいもあり息は上がっているが、マルロスに戦う力はまだ残っている。
呼吸を整えながら、周囲を遠巻きに取り囲むオークを睨み付けるマルロスに、トゥアゴンもまたゆっくりと息を整える。
「……トゥアゴン様、城にはかなり火が回ってきています。私がお護りしますので、早く安全な場所へ逃げましょう」
「………私は行けぬ」
「トゥアゴン様!?」
「私には、この国を捨てることは出来ぬのだ………マルロス、判ってくれぬか?」
至福の地のエルフの都、ティリオンによく似たこの美しい都を愛するトゥアゴンの気持ちは、マルロスもよく知っていた。
だけど、今にも崩れそうな城に主君一人を残して立ち去ることなど出来るはずもなく、困惑して泣きそうな表情を浮かべる。
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