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広い世界の夢物語


服や髪が炎に焦げ、避けきれないバルログの炎の鞭や爪が腕や身体を掠めて血が流れるにも関わらずに、紫暗と碧翠色の瞳がバルログを追い詰める。
炎に照らされて銀と黄金色の髪が揺れ、力を失って倒れるバルログを無感情に見つめる。
だが、身体を休める暇もなく迫り来るオークと狼を斬り倒し、更に姿を現したバルログと再び向かい合う。






戦いが熾烈を極める中で、エクセリオンとマルロスは傷だらけになりながら、数え切れない程のオークや狼を斬り倒し、3体のバルログを倒した。
さすがに息が切れ、剣を振るう腕も疲れと傷の痛みに動きが鈍くなってきた時、目の前に一際大きなバルログが立ち塞がる。

「はぁっ、は……まさか……ゴスモグ……っ!?」

呼吸を整えながら、立ち塞がるバルログの王ゴスモグと向かい合ったマルロスは、微かに震える手できつく双剣を握る。
バルログの王ゴスモグを相手にして、さすがにエクセリオンと2人だけで敵うとは思えず、どうすべきか考えを巡らせる。
自分達の強さを信じていても、ゴスモグの強さもまたよく知っているために、戦うことに躊躇が生じてしまう。

「……………マルロス、こいつは私が引き受ける」

「エクセリオンっ!?何を言ってるんだ、一人で敵う相手ではないだろう!?」

「だからだ。私が引き付けて時間を稼ぐから、その間にトゥアゴン様を安全な場所へお連れしろ」

ゴスモグと睨み合いながら、エクセリオンは淡々して言葉を紡ぐのを、マルロスは信じられないように見つめる。
今ここでエクセリオンを置いて行ったら、見殺しにするも同然だとマルロスはよく判っているから、だからこそエクセリオンの言葉が信じられなかった。

「マルロス、これは命令だ」

「っ!?そんな………っ、狡いよエクセリオン!!」

「大丈夫、時間を稼ぐだけだ。後から必ず追い付くから、早くトゥアゴン様の所へ!!」

半歩後ろに居るマルロスに、エクセリオンはいつもと同じように微笑んでみせると、マルロスは何も言い返せなくなる。
立場的には対等とは言え、エクセリオンの副官であるマルロスには、命令だと言われたら拒むことが出来ない。
まして、今の状況を考えれば、ゴスモグを相手に2人揃って命を落とし国を護るために必要な者が居なくなるより、犠牲になるのは少ない方が良いことは明白で。
時間を稼ぐだけだと、エクセリオンが言う言葉に隠された本当の意味に勘づいて、マルロスはきつく唇を噛み締める。

「……………っ、絶対、絶対後から来るよ、ね……!?」

「判ってるよ。私がマルロスに嘘をついたことが、今までに一度だってあったか?」

花が綻ぶように微笑んだエクセリオンに、マルロスは残りたい気持ちを振り切るように一度だけ大きく頷いて、辺りを囲むように迫っていたオークを斬り倒しながら城へ走る。
振り返りそうになる自分を叱咤して、マルロスは目の前に立ち塞がるオークの群れを斬り伏せ蹴散らして、王の間を目指す。


 

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