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広い世界の夢物語


空が少しずつ白み始め、夜明けが近付いていることを知る。
ベルトから笛を取り、包んでいた布を取って奏でる準備を始めたマルロスが、ふと空気がおかしいことに気付いた。
妙な気配を、北の方から微かに感じ取ったのだが、それが何を意味するのか判らなかった。
だが、マルロスが北の妙な気配に気が付いてからそう間を置かずに、城壁に登ったエルフ達がざわめき始めた。
夜明けの輝きが東の方から現れた歓喜ではなく、驚愕と恐怖に満ちたざわめきだった。

「何事だ?」

辺りを見回す親友や主君に構わず、マルロスは先程から感じている北の妙な気配を確かめるべく視線を転じ、驚きのあまり数瞬の間言葉を失った。
北の山々を越え、モルゴスの軍勢が津波のように都に迫っているではないか。

「トゥアゴン様!!モルゴスの軍勢が北の山を越えて都に迫っております!!」

「何だと!?」

マルロスの言葉が城壁に響き、人々は恐怖に震える。
モルゴス軍が迫るのを食い止めようにも、北の防備は最も手薄だったせいもあり、瞬く間に敵は城壁まで押し寄せた。
国の守備を司る大将達が、恐慌状態に陥った人々の中から武官を率いて城門を飛び出し、主君や国民を護るためにモルゴス軍と戦う。

「グロールフィンデル、トゥアゴン様達を任せる!!マルロス、我らは城門だ!!」

「ああ!!」

エクセリオンの言葉に、グロールフィンデルとマルロスが頷いて、部下が持ってきたそれぞれの愛剣を手に走り出す。
城壁を駆け下る途中も、エクセリオンとマルロスは部下に絶えず指示を飛ばし、守備を掻い潜り城内に入り込んだオークを叩き斬る。
城門から、王宮の美しい広場へとオークの血でどす黒く汚れた剣を携え飛び出せば、広場は炎と血に赤く染まっていた。
オークや狼が広場を破壊し、エルフの兵や民の区別なく殺す。
バルログが広場を炎で包み、龍が城壁を破壊する。
凄惨な光景に息を呑み、怒りに胸を焦がしたエクセリオンとマルロスが剣を構え、広場に溢れるオークや狼を斬り捨てる。
そんな2人に気付いたのか、バルログの一体が耳をつんざくような咆哮を上げて、炎の鞭を大きく振るう。

「バルログか……一人で相手をするには、少し厳しいな」

「だけど2人ならば、敵わない敵ではないだろう?」

バルログの吐く熱気を浴び、エクセリオンとマルロスが不敵な笑みを浮かべると、呼吸を合わせて剣を振るう。
自分自身の強さと、親友の強さをよく知っていてその強さを信じているからこそ、強大な敵でも立ち向かえる。
バルログの炎と熱気、引き裂かれそうな鋭い爪と炎の鞭と剣に怯まず、エクセリオンとマルロスが息の合った攻撃をする。



 

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