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広い世界の夢物語


宴の席は更に賑やかになり、開け放たれたままの大扉の向こうも賑わっていて、夜明けが近づくにつれ人々は浮き足立つ。
朝日が昇る頃には、城壁の上に集まって太陽へその輝きと恵みを称える歌を、皆で歌うのが夏至の祭りの決まりだった。
そろそろ夜が明けると、人々が城壁の上へと集まり始める頃には、エクセリオン達3人も宴の席を立つ。
華やかに着飾った人々の流れに乗って、大広間から城壁へと出ればさぁっと心地好い夜風が頬を撫で、殆んど酔うことのないエルフの身体からワインの酔い気を拭い去る。

「気持ちの良い風だな」

「星も良く輝いているし、今年も良い夜明けになりそうだな」

グロールフィンデルとエクセリオンの言葉に、マルロスも頬を撫でる心地好い風に目を細めると、風に揺れる長い髪が乱れないよう押さえる。
城壁には人々が溢れ、3人は少し高い場所へ足を向ける。

「エクセリオン、マルロス」

「トゥアゴン様」

不意に声を掛けられ、エクセリオン達3人が揃って顔を上げると、一番高い場所に登っていた主君が居た。
呼ばれたエクセリオンとマルロスが傍らに行けば、何やら楽しげな表情を浮かべているのに気が付いて、思わず不思議そうに首を傾げてしまう。

「どうだ2人共、今年は2人の笛で歌わぬか?」

「それは良いですね。2人共、是非奏でてくれよ」

主君トゥアゴンの言葉を聞き、グロールフィンデルも楽しげな笑みを浮かべて2人に振り返れば、驚いたような表情を浮かべていた2人も笑みを見せる。
宴の席で奏でた笛は、元々2人が愛用している大切な物なので人に預けることもなく、柔らかい布に包まれてベルトに挟んである。
トゥアゴンの傍らには、イドリルと幼いエアレンディルを抱いたトゥオルが居て、彼らも期待するように2人を見ている。

「えぇ、判りました」

エクセリオンが笑みを浮かべて頷けば、マルロスもまた同じように笑みを見せて頷く。



 

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あきゅろす。
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