広い世界の夢物語
5
ドドドド……と地鳴りが遠ざかる。
反乱軍は、南門を突破するべく国王軍と戦い始め、その喧騒にビビが目を覚ます。
身体を起こせば、カルーとマルロスがずるりと転がる。
「マルロスさん、カルー……私をかばって……!?」
血だらけで倒れ、意識のないマルロスとカルーにビビは目を潤ませるが、涙を堪える。
反乱は始まってしまった。
だけど、ビビはまだ諦めていなかった。
「船でちゃんと学んだのよ!!諦めの悪さなら!!」
まだ反乱は止められる、ビビはそう信じて立ち上がろうとした時、聞き慣れた声が聞こえた。
「ビビ!!こっちに乗れ!!」
「ウソップさん!!」
振り返った先には、華麗に馬を操り現れたウソップ。
何故ここにと言う思いが過ったが、急げと急かすウソップが溢した言葉に、ビビは背筋に冷たい汗を感じた。
「そのトリはもうダメだっ!!」
ウソップが、カルーのことをそんな風に呼ぶなんて、有り得ないことだった。
だからこそ気付けた、小さな小さな間違い。
ドクンドクン、とビビの心臓が高鳴る。
ちっとも動かないビビを急かすウソップに、ビビは最後の確認を口にする。
「ウソップさん………!?証明して………!!」
それは、皆で決めた合言葉。
「おい、おれを疑うのか!?」
ほら、と差し出されたウソップの左腕には、目印の包帯。
だけど違う。
証明しろ、その言葉を合図に示す仲間の印は、それではない。
本当の"仲間の印"は、包帯の下に隠されている。
だから本物だと証明する時は、包帯を取って"印"を見せる。
そう決めていた。
やっぱり、とビビが思った次の瞬間、ビビの身体がふわりと浮き上がった。
「走れカルー!!」
「クエ――――ッ!!」
意識がないとばかり思っていたマルロスが、ビビを抱き上げてカルーの手綱を握っていた。
マルロスは、ウソップが現れる少し前に意識を取り戻し、痛みを堪えるためにじっとしていただけだった。
ウソップが現れ、作戦と違うことに気付いたマルロスは、気付かれないように様子を伺っていた。
そして、目の前のウソップが偽者だと判った瞬間に飛び起き、同時に起き上がったカルーにビビを抱いて飛び乗った。
ゾロが考えた、2段構えの印が役に立つ時がくるなんて、ビビはついそう思った。
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