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広い世界の夢物語


宮殿の前で、マルロスは紫暗色のマントの砂を払い、羽織り直してブローチで止める。
傍らのカルーは喉が乾いているせいと、一晩走り抜いた疲れに舌を出している。

「カルーが一緒なら、国王陛下への謁見は無理でも高官に逢えると思うんだけど……」

長い髪を乾いた風に揺らし、マルロスは宮殿を見上げる。
さすがに、反乱の最中に見ず知らずの人間がいきなり国王に逢うわけにもいかず、ここで待つように兵士に言われている。
国王に近い人物でも良い、話を聞いてくれてビビからの手紙を託せる人なら、マルロスはそう考えていた。

「カルー!!」

「クエっ!!」

不意に、宮殿から姿を見せた男性がカルーを呼び、その姿を見たカルーが片方の羽を上げる。
知り合いかと小さく問えば、国王の側近らしい。

「君は……」

「私は海賊、麦わらの一味が一人、マルロスと申します。ビビ王女から手紙を託されました。国王陛下との謁見は出来ませんか?」

「ビビ様からの手紙……!?」

海賊と言う単語に驚きながら、宮殿から姿を見せた男、チャカはマルロスを見つめた。
紫暗色のマントに身を包み、長い黄金色の髪が美しいその姿はまるで、海賊と言うより貴人のようで。
少なくとも、国王に危害を加えるような輩には見えない。
王女からの手紙を預かっていると言う言葉も、それらしい物をわざとらしく見せて誇張するでもないことが、逆に信憑性を高めている。

「何故、海賊である君がビビ様の手紙を?」

「訳あって、ビビ王女は今、私の仲間と共に反乱を止めるために奔走しておいでです。確実に手紙を届けるため、仲間の内で私が選ばれて託されました」

「クエ、クエ、クエーっ」



 

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