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広い世界の夢物語


何はともあれ、とにかく砂漠を越えるための物資は揃ったことだと、ビビにこれからの行き先を訊ねる。
ビビは、またいつ暴動を起こして無駄な血が流れるかわからないことを危惧し、まず反乱軍を止めたいと話す。
そのために、反乱軍のリーダーがいる本拠地である、『ユバ』というオアシスを目指すと話していた最中に、突然ゾロが隠れろとビビの腕を引く。
何事かと様子を伺う中、マルロスは不意に聞こえてきた喧騒に気付き、壁の影から騒ぎの中心らしい方を見遣る。

「何?」

「…………海軍、ですね。何故この町に……?」

「しかもえらい騒ぎ様だぜ……海賊でも現れたか」

ゾロの言葉に、マルロスは嫌な予感を覚える。
海軍が追い掛けている人影を探して、その姿に溜め息をつく。
赤いベストにハーフパンツ、麦わら帽子を被った少年が走り抜け、その後ろを海軍の兵が追い掛ける。
どう見ても、我らが船長ルフィが海軍に追われている。
思わず脱力する中、不意にこちらに気付いたルフィがピタリと足を止め、向きを変えて走ってくる。

「麦わらの一味がいたぞォ!!」

「バカ!!てめェ一人でマいて来い!!」

「ウソップ、チョッパー!!荷物を!!」

マルロスの言葉に、ウソップとチョッパーが慌てて荷物をまとめると、それぞれに抱えて走り出す準備をした時。
海軍本部大佐のスモーカーの煙の腕が、ルフィを捕らえようとしたのを遮るように、炎が壁となりルフィを守る。

「やめときな。お前は"煙"だろうが、おれは"火"だ。おれとお前の能力じゃ、勝負はつかねェよ」

「誰なの……!?あれ」

「……………エース……!?」

「変わらねェな、ルフィ」

ニッ、と笑って肩越しに振り向いたそばかす顔の青年は、すぐにスモーカーに向き直る。
そして、このままでは話も出来ないからと言って、スモーカーの相手を引き受けるから先に逃げろと言うその背中に、ルフィはひとつ頷く。

「行くぞっ!!」

そばかす顔の青年が誰なのか、クルー達にはそれすらも判らないと言うのに、ルフィは荷物を抱えて走り出す。
それを追い掛けるように、それぞれに荷物を担いで走り出す。
ちらり、と走り出す間際に後ろを振り返ったマルロスは、その背中にふと既視感を覚える。
それは時折、ルフィやゾロ、サンジの背中に感じる何かによく似ている、マルロスを惹き付けるもの。
それが何なのかは、マルロスにも判らなかった。





 

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