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広い世界の夢物語
稽古

チョッパーの健康診断が終わった頃、丁度昼食となった。
賑やかな食事を終え、紅茶を飲みながら一休みしていたマルロスの前にゾロが立ち、ニヤリと笑った。

「ウイスキーピークでの約束、覚えてるか?」

「稽古か……判った」

楽しげなゾロにつられて、マルロスも口元に笑みを浮かべる。
2人で船首甲板に向かい、そこで喋っていたルフィ達を危ないからと退かせて、ゾロとマルロスが向かい合う。

「船に傷付けんなよー」

ウソップの忠告に頷き、マルロスが双剣を抜き放つ。
同時にゾロも雪走と三代鬼徹を構え、甲板にはピリピリとした緊張感が漂う。
ごくりと、階段から顔を覗かせて見学しているルフィ達が唾を飲む音が聞こえそうな程、静まり返り張り詰めた空間。
さぁっ、と微かな風が吹き抜けたのを合図に、ゾロが刀を振り上げて甲板を蹴る。
同時に、マルロスがゾロの刀を受け止めるように構えを変え、ギィンと刀と剣が交わる。
マルロスは、ゾロの刀を受け止めるのとほぼ同時に体重を横へ移動させ、ゾロの刀をいなすように受け流す。
マルロスの反応に、ゾロが楽しげな笑みを浮かべて雪走を返すと、マルロスは逆手に構えた左手の剣で受ける。
それからは、まるで踊りのようだった。
果敢に攻めるゾロの刀を、マルロスは難なく受け止めて時には僅かな隙をついて攻撃を返し、時にはあしらうように軽々と受け流す。
くるくると、長い黄金色の髪を揺らして舞い踊るようなマルロスの姿に、見ている者は目を奪われる。
リズムよく響く剣戟に合わせ、しなやかに舞うマルロスとゾロの手合わせは、休むことなく続いていく。
もちろん、お互いに手加減をしているから船に掠り傷ひとつ付けることもなく、2人は楽しげに笑みさえ浮かべている。
そうしてどれだけ続いたのか、不意に交えた刀からゾロが先に込めていた力を抜くと、軽く上がった息を整える。

「まいった………マルロスの剣はやりにくいな……」

「ゾロは力で押していくタイプだからな、私の剣とは正反対だから無理もない。私だって、もう腕がだるいよ」

互いに剣を収め、笑い合う。
ゾロの刀を受けて、痺れるようにだるくなった腕を軽く揉み解すマルロスに、見学していたルフィが飛び付く。

「すげェすげェ!!マルロスってやっぱ強ェんだな!!」

「まだまだだよ。今日はゾロが加減してくれたからね」

不意に飛び付かれて、僅かにバランスを崩しながらも立て直したマルロスは、目を輝かせるルフィに笑って答える。
そんなマルロスに、ゾロは密かに眉を寄せる。
手加減していたのはお互い様、お互いが本気じゃなかったから稽古になっていたが、そうでなければ負かされていたかもしれない。
『柔の剣』が相手だったから、なんて言い訳はしたくない。
まずは『柔』に対する苦手意識からだな、とゾロは密かに今後の目標を決める。


 

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