広い世界の夢物語 3 「マルロスが病気にならないことは判ったけど、怪我をしないわけじゃないんだろ?だったらやっぱり一応やっておこうよ」 「…………判りました。でも、下の男部屋でいいですか?あまり人前で服を脱ぎたくないんです」 心配げなチョッパーの言葉にマルロスは頷くも、ルフィ達のように甲板での診断は嫌だと首を振る。 その言葉に首を傾げながらも、チョッパーは頷いて先に男部屋に下りると、後に続いたマルロスに振り返る。 きっちりと部屋の入り口を閉めてから、マルロスは着ていた服を脱いでいく。 部屋の明かりに照らされ、マルロスの身体が露になる。 「あ…………」 酷い傷跡が縦横に走るマルロスの身体に、チョッパーは目が離せなくなる。 斬り傷だけでなく、火傷の跡や何かに引き裂かれたような傷跡の残る身体は、綺麗な顔とはあまりに不釣り合いで。 この傷跡が、マルロスが人前で服を脱ぎたくないと言った理由だと、チョッパーは嫌でも理解した。 「………見ていて、あまり気分の良いものではないだろう?」 だから甲板は嫌だったんだ、とマルロスは苦く笑う。 いつまでも隠しておけるとは、マルロスも思っていない。 だけど、出来れば知られたくないとも思っている。 「……今は、何処も痛くないんだよな?」 「あぁ」 そっとマルロスの傷跡に手を添えて、チョッパーは悲しげな表情を浮かべる。 マルロスが命を落としたのは、この傷が原因なんだと判ってしまったから。 命を落とした理由までは、マルロスは話してくれなかった。 正確には話せなかったのだが、チョッパーは何となく察してしまう。 きっとマルロスのことだから、大切なものを守るために戦ったんだろう、と。 そんなことを言い切れる程、まだマルロスのことは知らないけれど、そう自然と思えた。 「あぁそう言えば、昨日雪崩に巻き込まれた時に骨を少しやられたみたいなんだ」 「えっ!?何でそんな大事なこと忘れてんだよ!!」 悲しげな表情を一転、少し怒ったような表情に変わったチョッパーに、マルロスは困ったように笑う。 ソファに座らされ、チョッパーの診察を受けながらマルロスは苦く笑った。 まるで自分のことのように悲しむチョッパーに、命を落とした時のことなど話せない。 優しすぎるくらい優しいチョッパーに、悲しんでほしくなかったから。 [*前へ][次へ#] |