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広い世界の夢物語


「だいたいよ、国中で医者が一人なんておかしすぎるぜ!!」

呆れたようなサンジの言葉に、ドルトンが僅かに表情を歪めたが、気付いたのはマルロスだけだった。
この国に何があったのか、マルロスはそんなことを思う。

「おい、ナミ!!ナミ!!聞こえるか?」

「――――で、お前は何をやってんだ―――っ!!」

唐突にベッドに近づき、ぺちぺちとナミの頬を軽く叩いて起こそうとしているルフィに、マルロス以外が怒鳴る。
きょとん、とルフィの言動を見つめるマルロスが口を挟む隙もなく、ルフィはナミを背負って山に登ると言う。
ビビ達が引き止めても、ルフィは大丈夫だと言って聞かない。
しかも、意識が高熱で朦朧としているだろうナミが、笑ってルフィの言葉に頷く。
結局、止めても無駄だと判り、仕方がないとサンジが一緒に行くことになると、ビビも諦めたように頷く。




そうと決まれば、出来るだけナミの負担を和らげるための手段を考え、出来る限りのことをしてやらなければならない。
ウソップがルフィに、一度でも転んだらナミは死ぬと思え、と言い聞かせる。
ナミに厚着をさせて、しっかりジャケットを着せルフィの背中に背負わせ、ビビが紐でしっかりとナミとルフィを結ぶ。
カトラスを支えにナミを背負ったルフィと、もしもの時のために一緒に行くサンジ。
ドルトンが、真っ直ぐ山に向かうコースはラパーンという凶暴なウサギが出るから危険だと、遠回りの道を教えてくれたが2人は大丈夫だと頷く。
深い雪の中、元気よく走り出す2人の背中を見送る。
大丈夫かと心配するドルトンの呟きに、ルフィとサンジは心配要らないが問題はナミの体力だと、ウソップとビビが答える。
それでも今は、信じて待つことしか出来ない。
ドルトンが、寒いから家の中に入ろうと3人を促すが、ウソップとビビは外で構わないと首を振る。
身体が震えてるビビに、マルロスはマントを羽織らせる。

「マルロスさん」

「私は平気ですよ、風邪もひきませんから」

ビビまで体調を崩しては意味がない、と遠慮するビビにマントを羽織らせたマルロスは、白い山を眺める。
吐く息さえ凍りそうな、あの氷の海に比べればこれくらいの寒さ、マルロスには何てことはなかった。
それでなくとも、環状山脈の内にある王国で暮らしていたために、どちらかと言えば寒さには慣れ親しんでいる。

「ありがとう」

ビビが小さく呟いた言葉に、マルロスは笑みを浮かべ、薄く雪の積もったビビの頭をそっと撫でる。
結局、ドルトンも付き合おうと言ってその場に座り込み、滔々と降り積もる雪の中で、4人はドラムロッキーの山々を見つめる。




 

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あきゅろす。
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