広い世界の夢物語
3
そんなクルー達に背を向け、村へ案内しようと言ったリーダーの男が、思い出したように付け加える。
この国には魔女が一人いるだけだ、と。
魔女と聞いて、クルーが揃って首を傾げる。
とは言え、とにかくナミを医者に見せるのが先だと、サンジとビビが船室に向かう。
擦れ違う時、サンジの頭をあやすように軽くぽんぽんと撫でたマルロスに、サンジは何も言えなかった。
「マルロス」
「わっ」
ゾロに呼ばれ振り返ったマルロスは、不意に傷付いた腕を取られて驚く。
赤く血が滲む傷口に、ゾロが眉間の皺を深くする。
軽く首を傾げるマルロスに、無言でゾロはポケットからいつもの黒い手拭いを取り出し、マルロスの腕に巻き付ける。
「おまえは……心臓に悪い」
「え?あぁ、さっきのか?あれはその……少し驚いてバランスを崩しただけで……」
少し気まずそうに、目を逸らしながらマルロスがそう言う様を見ながら、ゾロは僅かに唇の端を上げる。
ほんの微かに目元を赤らめる様子から、マルロスが照れていることが判る。
「……笑うことはないだろ」
「何のことだ?ん、こんなもんで良いだろ。あとで消毒しとけよ」
「あぁ、ありがとう」
簡単な手当てだが、傷口を剥き出しにしているよりはマシだろう。
きつすぎない程度に結ばれた手拭いに、マルロスが笑みを浮かべて礼を言えば、ゾロも満足げに笑う。
「ところでよ、結局、誰が船番に残るんだ?」
ウソップの問い掛けに、ゾロは自分が残ると言い出す。
「筋トレでもしてる」
「加減しろよ、まだ足の怪我が治ったわけじゃないんだから」
しっかり釘を刺されても、気にした風もなく適当に頷いたゾロに、マルロスは苦笑いを浮かべる。
応急処置より少しマシ、そんな程度の手当てしかしていない怪我なのだ、無理をするなとマルロスは心配する。
もっとも、聞き入れてはくれないだろうけれど、と諦め半分の注意でもあったが。
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