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広い世界の夢物語


南へと舵を切り、大きな風の気配から遠ざかり始めた頃、ビビが船室から姿を見せた。
思い詰めた表情で、ラウンジの扉の前に立ち、手摺を掴んでクルーの顔を見回す。

「みんなにお願いがあるの」

意を決したように、ゆっくりとビビが言葉を紡いでいく。
国が大変な事態にあり、とにかく先を急ぎたい、一刻の猶予も許されない状況だと。
だから、船の"最高速度"でアラバスタに帰りたいと。

「………当然よ!!約束したじゃない!!」

強がるナミの言葉に、ビビは不意に語調を和らげる。

「……だったら、すぐに医者のいる島を探しましょう。一刻も早くナミさんの病気を治して、そしてアラバスタへ!!それがこの船の"最高速度"でしょう!?」

「そお―――――さっ!!それ以上スピードは出ねェ!!」

ビビの言葉に、ルフィが笑みを浮かべて答える。
ウソップは、ビビに王女として国の心配をするべきだろう、と訊ねるが、ビビはだからこそナミの病気を治してもらうのだと答える。
真っ直ぐな迷いのない答えに、クルーの気も引き締まる。
その決断を下すため、どれだけビビが悩み迷ったのかが容易に想像出来るマルロスは、ビビの言葉に微かな笑みを浮かべる。
そんなビビの言葉に、ナミも強がることを止める。
ふらつき、倒れかかったナミの身体をビビとマルロスが慌てて抱き止めた時、船の後方に巨大な竜巻が姿を現す。
その方角は、ついさっきまでメリー号が向かっていた方角。
もしも、ナミとマルロスが空気の変化に気付かなければ、間違いなく直撃していただろう。
グランドラインで発生するサイクロンは、前兆のない風だと言われていることを知るビビは、驚いたようにナミを見つめる。
理論だけではなく、身体で天候を感じ取る航海士なんて見たことがない、と。
ビビに凭れるナミを、マルロスが優しく抱き上げる。
船はこのまま南へ、医者を求めて進む。





 

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