広い世界の夢物語
6
ロウが燃え付き、炎が消える頃になって、木々の中に踞るマルロスにナミが気付いた。
「ねえちょっと、あれマルロスじゃない?」
「お、ほんとだ」
肩を抱いて踞るマルロスに、ナミが近付いて声をかける。
だが、見て判る程に震えているマルロスはナミの声が聞こえていないのか、きつく肩を抱いて顔を上げない。
「マルロスさん?」
ビビが肩に手を置いた瞬間、大袈裟なまでにびくりと体を震わせたマルロスは、青ざめた顔を跳ね上げる。
「ぁ………っ」
「ちょ、どうしたの?顔、真っ青じゃない、震えてるし……」
「……あ、いえ…………だ、大丈夫です……」
ふるふると、力なく頭を振って震える手を握り締めて、マルロスは消え入るように呟く。
先程より震えはマシになったようだが、それでもまだ手が震えている。
心配するように、ナミがマルロスの前にしゃがみ顔を覗き込むと、震える手に手を重ねる。
「すみません………本当に、もう大丈夫です」
「ん〜………ま、良いわ。顔色もだいぶマシになって、震えも治ったみたいだし。理由は聞かない方が良さそうね」
「すみません………それで、あの、ナミさん……これ、羽織ってください」
立ち上がったマルロスは、着ていた薄手のショートコートを脱いで、ナミの肩に羽織らせる。
目のやり場に困る、と表情が物語るマルロスにナミはこれぐらい何でもないと笑い飛ばすが、コートはありがたく借りることにした。
「それで、一体何があったんですか?」
少々露骨だが、マルロスがわざとらしく話を逸らす。
それを受けて、ウソップがいつものようにだいぶ嘘を盛り込んで話を始めれば、ナミがそれを遮って簡単に説明する。
敢えていつも通り接してくれる仲間に、マルロスは心の中で感謝しながら話を聞く。
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