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広い世界の夢物語


船に戻る途中、不意に耳に届いたそれに足を止めて、ジャングルの奥を見つめる。
深い木々の向こうに、確かに見えた微かな影と鳴き声。

「あれは……カルー?」

木々の微かな隙間から見えた影は、何かに追われるように走っていた。
間違いなく何かあったと判断して、船にではなくカルーの姿が見えた方へと、マルロスは走り出す。
篭の中の木苺が、いくつか転げ落ちる。




木々が拓け、ジャングルの中の広い空き地が見えたところで、マルロスは足を止めた。
ジャングルの空き地に、白いロウで出来た奇妙な造形物に、カルーが走り回ってロープを巻き付けている。
ロープの先を辿れば、地面に横たわったウソップに着く。
そのウソップの腹の上に、ウイスキーピークでルフィとゾロに倒された、バロックワークスのミス・バレンタインが居る。
カルーに銃を向けているのは、確かMr.5だったろうか。
それにルフィが、見覚えのない変な姿の男と戦っている。

「フハハハハ!!諦めろ諦めろ!!奴らは私の"美術作品"になったのだ!!」

よく見れば、奇妙な造形物に白く固まったゾロとナミとビビの姿があり、その隣には大きな人間が倒れて固まっている。
ロウで固まったのか、大丈夫なのだろうか、と考える。

「あいつらの命は、お前なんかにやらねェよ!!」

ルフィの言葉を聞き、マルロスはある程度の状況を把握する。
バロックワークスの追手が、ビビと自分達を追ってこの島に来ていたのだ。
のんびり冒険などしている場合ではなかった、と今更になって思い知らされる。
助太刀に入ろうと、マルロスは持っていた篭を地面に置く。

「火で溶けるんなら……!!この火を使って溶かしてやるっ!!」

「ルフィ!!………そんな小せェ火じゃ間に合わねェ!!カルーのロープに火をつけろ!!」

「鳥のロープ!?」

「油たっぷりの……スペシャルロープだ……」

「わかった!!よし!!みんな起きろォ!!」

奇妙な造形物に縦横に這うロープに、ルフィが変な男の頭の火をつける。
ボォォオッ、と瞬く間に炎が大きく広がっていく。
赤く燃え上がる炎を見た瞬間、マルロスの腰の双剣にかけた手が離れる。
身体が震え出す。
マルロスの脳裏に蘇る、あの日の記憶。
全てを奪った炎が、目の前に広がる。
くらり、と目眩がマルロスを襲う。
足から力が抜け、崩れ落ちるようにしゃがみ込む。
震える手で肩を抱き、きつく目を閉じる。
聞こえていた音が、耳から遠くなる代わりに、記憶の中の音が響く。





 

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